卵焼きの風味

近所の魚力で松露の卵焼きが手に入る。おいしさの秘密はメイラード反応だ、と思って日記を書き始めた。

甘辛のたんぱく質が高温の油に触れるときに化学反応が起きて風味が増す。かつ丼も海老天丼も、揚げたての衣がツユに触れてしゅわっとならないと風味は出ない。揚げたオカキに甘辛醤油をくぐらせたせんべいにもそういう風味がある。揚げ置きの天ぷらをチンして天丼を作るところがあるが、不味い。

松露の卵焼きを食べていて、かつ丼と天丼に共通する良い風味を感じた。松露の卵焼きは砂糖多めで少し甘いなと思うけれど、これくらいのあまさにこの風味が伴うことが多い気がするから砂糖は必須だ。たかが卵焼きと思われるかもしれないが、卵焼きは奥が深い。

素材は甘めに作って、焼くときはできるだけ多層にし、卵と油が触れる回数を増やし、香ばしさが出る機会を増やし閉じ込める。食べるときに包み込まれた香りが多くなるから。茶色くなるぐらい砂糖を入れて焦がさないように作る。

↑ 自分で作ってみるのだけどうまくいかない。まず砂糖が少なすぎた。

松露のパッケージ、原材料名に「リンゴ酢」とある。( ゚Д゚)! 調べると、種類は問わず、卵に酢を少し入れるとふんわり仕上がるのだそうだ。pHを小さくすることで、凝固点が下がるとのこと。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1957/27/3/27_3_146/_pdf

牛乳や卵に酢を入れると、熱を加えなくても凝固する。。。。?

アルブミンなどの分子が荷電してコロイドを形成しているときは、それぞれ反発しあって凝固することがない。そこにpHを調整する液を加えると、荷電を失って分子同士がくっついて凝固する。そのpHを等電点ということぐらいは高校の化学で習った。

高分子の荷電の身近な例をあげる。血管の中でアルブミンは陰性に荷電する。血管内皮細胞は、強力な陰性荷電を有し、同じく陰性に荷電した血小板とは反発し合い、血小板の粘着・凝集が防がれている。血液をかためる成分が日頃血管にくっつかない理由。

赤血球表面も、陰性荷電を有している。炎症時などに陽性荷電を有するフィブリノーゲンやグロブリンが作られ増量すると、赤血球の陰性荷電が中和されて、赤血球の凝集が生じやすくなり、凝集すると落ちる速度が速くなるので赤血球沈降速度が亢進する。

腎糸球体の基底膜も、陰性荷電を有している。ネフローゼ症候群では、腎糸球体の基底膜の陰性電荷が消失し、陰性荷電を有しているアルブミンが血管外に漏出し、血液中のアルブミンが減少し、赤血球沈降速度が亢進する。

A: albumin, P: platelet, F: fibrinogen, G: globulin

血管の模式図ですw マウスではかきにくい。。

脱線した。卵焼きに戻す。

等電点付近のpHにおいては、タンパク質分子の荷電が最小となるために、変性タンパク質分子間の相互作用が起こりやすく、等電点から離れるにつれてタンパク分子の荷電は増加し互いに反発しあう。反発しあっているほうが固まりにくい。

卵白リゾチームの等電点は11、卵白アルブミンの等電点は4.6、そのほかのたんぱく質を含んでいて、それらの等電点の平均は7以上の状態。ここにリンゴ酢などを加えて、アルブミンの等電点に近づけるとふわっとなる?もう少し掘り下げる。

卵白のたんぱく質は主成分がオボアルブミン(54%)でざっくりアルブミンが主役と言っていい。卵焼きはアルブミンの処理と考えよう。

卵白のゲル化機構に関する食品化学的研究 http://gakui.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/gazo.cgi?no=214510 によると、pHを調整して加熱した時にどのpHがもっともはやく凝固するかを調べているが、卵のタンパクの主成分である、オボアルブミンとオボトランスフェリンの等電点にちかいpH5および7で、容易に濁度が上昇つまり凝固した。等電点から離れるとタンパク質の三次構造は不安定になるが、荷電による斥力が大きくなり凝固しにくかった。pHを高い状態にすると卵白加熱ゲルの保水性が上がる。

卵焼きが酸を入れるとふわっとなる理由を考えると「低温で速く固まり始めるほうがフワッとなる」からか、「卵焼きをつくるのに保水性(ゲル化)がフワッとなるためには不要で、酸を加えて水を抜いている」のか。次は砂糖多めで、酢をpH5に調整して作ってみようと思います。

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