檳榔

店の奥に腰掛けた婦人が、手作業でなにかを組み合わせているお店を見つけた。ちまきでも作っているように見えた。夜店の下ごしらえをしているような様子。美味しそうである。許可をいただき写真を撮らせてもらう。初めての台湾で何もかもが珍しい。

英語も日本語も通じないそのお店で、ゼスチャーで美味しいのか聞いてみたら、笑って何いってんだというふうな感じで一つやってみるかい、こうするんだ、という感じでお姉さんが食べ方を教えてくれた。お金はいいよ、と。台北の人はいつもフレンドリーでいい。

指示されたとおりに口に含んで噛む。コップを手渡され、出た唾液はそこへ吐くように、と。それほど葉っぱの青くささも味もない。出来た唾液は美味しいというほどのものでもなかった。亜硝酸剤の舌下錠のように、口腔内の血管から吸収させるようだ。ちょっと渋い感じがした。噛み続けていたら、比較的急にアタマがのぼせたようにボワーンとしてきた。ガツンときた。酔ったときに少し似ていて、意識が変容するのが手にとるようにわかって面白い。キツめのタバコを吸って急にシャッキリするあの意識変容のスピード感に近い。軽く興奮気味になる。え?なにこれ!と、ちょっとの間だけハイになって愉快になった。思ったよりもメリハリが効いた効き方をする。キレが良い。コップに唾棄すると、赤かった。台北の道端やモノトーンのテラスなどに赤い汁がよく点在していたがあの色と同じ唾液になっていた。15分ぐらいで効果はなくなった。

お店の外に、檳榔という文字を見つけ、類推でビンロウと読めた。その時点ではビンロウとこの緑色のガムみたいなものとの紐付けできず。檳榔の画像をネットで調べてそれがビンロウだとわかった。あまり体にいいものではないようだ。道端に落ちている赤い汁は鳥が落とした果実をふんづけたのかと思っていたが、ひとがビンロウを唾棄したあとだとわかった。

見た感じとてもヘルシーな感じではあるけれど、シャキッとぼーっとするために使うタバコみたいな感じの嗜好品。何度か台北にいくうちに、赤い唾棄は殆ど見なくなった。

帰国して調べると美人の台湾女性「ビンロウ西施」が売る場所もあるらしいことがわかった。私がたまたま入った店は台北駅周辺の昼下がり、化粧っ気のないおばさんが部屋着みたいな普段着でいる普通の店。顔をクシャクシャにして笑う愛嬌のあるその檳榔屋のおばさんが、若いときにビンロウ西施であったかもしれないと妄想をたくましくしている。

びんろうの実にはアレコリンという植物アルカロイドが種に含まれ、石灰とともに噛むことで効率的に抽出できる。中枢神経系に作用し、ムスカリン性アセチルコリンレセプターのパーシャルアゴニストとして働き、タバコに似た興奮作用を生じる。認知症の薬として検討されたこともあるが、発がん性のため第一選択にはならなかった。

https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/38625/10959_%E8%A6%81%E6%97%A8.pdf

コメント

  1. 檳榔、薬膳や中薬で出てくるので、名前は知ってましたが、食べたことはありません…(^^ゞ
    葉っぱにくるんでるかんじなのは、何か理由があるのですか?
    檳榔は、中医学では、食べ過ぎや殺虫、マラリアに使ったりするものと言われていますが、発がん性があるとは!!

  2. yopioid より:

    いつもコメントありがとうございます
    漢方だと女神散に檳榔子が入ってますね。
    葉っぱの役目の詳細はもうしわけありませんがわかりません。
    東南アジア一帯(インドから東南アジア、パプアニューギニアあたりまで)で
    この葉っぱが使われています。葉っぱに石灰を塗り、それでビンロウジをくるみます。
    冒頭の写真をご参照ください。白い点が石灰です。
    包んだままのものをカミます。それなりに硬いです。
    一般に植物アルカロイドは酸と化合し、塩の形で存在しています。
    調べてみたのですが、化学的な説明は私にはできません。

    ベトナムではビンロウジ(実)とビンロウの葉は、
    愛と結婚の象徴なのだそうで、民俗学的には不可分のようです。
    フィリピンでは考古学的に4000年間その組み合わせで使われているといわれています。

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