つゆのあとさき

永井荷風、つゆのあとさきを読んで、調べた言葉のただのメモです。

本鼈甲真珠入挿櫛

掏摸 スリ 警察用語ではトーモ 「掏」はとる、えらぶ、くじる「摸」はさがすさがしもとめるの意。

売卜者 うらないしゃ 

省線電車 首都圏の近距離専用電車のこと。国鉄時代には国電とも。山手線などのこと。鉄道院時代には院電、鉄道省、運輸通信省から運輸省時代には省線電車、省電。

天佑神助 てんゆうしんじょ 天の助けと神の助けの意で、思わぬ幸運が転がりこんできて助かること。

東郷平八郎の言「天は正義に与し、神は至誠に感ず」 意味「天祐や神助が、必ずあるものと信じている。ただそれは、正義あってこその天祐、至誠あっての神助だ。」

帙入の和本 書物の損傷を防ぐために包む覆い。厚紙を芯(しん)とし、表に布をはって作る。文巻(ふまき)。文包(ふみづつみ)。

離中断 りちゅうだん 八卦の離のこと。離のマークは中が切れているから離中断、乾は乾皆連。そのほか兌上断、震下連、巽下断、坎中連、艮上連、坤皆断。乾は天、兌は沢、離は火、震は雷、巽は風、坎は水、艮は山、坤は地を表す。天一は水・北方を生じ、地二は火・南方を生じ、天三は木・東方を生じ、地四は金・西方を生じ、天五は土・中央を生ず。地六は水・北方を成し、天七は火・南方を成し、地八は木・東方を成し、天九は金・西方を成し、地十は土・中央を成す。

周易本義

「挙って」 こぞって

仔細らしく眼を閉じて」  もったいぶった感じで。ワケアリげに。他、仔細もないだろう(差し支え、これと言うほどの事柄)仔細有りげな面持ち(特別のワケがありそうな)事ここに至ってはもはや仔細に及ばず。(こうなっては事情を言うまでもない)

「綺羅を張ったらかつかつねえ」 華やかに装う。体裁を作る。見えをはる。綺羅をかざる、綺羅をまとう。綾織の絹布のこと。

「トタンの海鼠板」 波状鉄板のことをなまこいたと言う。

海鼠板

「鏡一台の前にはいずれも女が二、三人ずつ繍眼児押しに顔を突出つきだして」 繍眼児=目白=メジロ 目白押し、メジロは群れて押し合いへし合いする、その様子を目白押しと言う。

舞台で使う藪畳のような植込みがおいてある  藪畳は歌舞伎の大道具の一つ。https://kabukizabutai.co.jp/saisin/genba/3738/

委しく くわしく

敷島 

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情なく =素気なく すげなく

「アラ、実にシャンねえ。」  =美人。第二次大戦後の数年まで主に学生語として盛んに使われた。「とて―」の対語として「ウンシャン(=不美人)」もある。ドイツ schön (=美しい)から。ドイツ語だったのか!!

梳子 すきこ 髪結の弟子

「下駄の音と共に褄を取った芸者の姿が現れた」 褄をとる 1 裾の長い着物の竪褄 (たてづま) を手で持ち上げて歩く。「―・って歩く」 2 《芸者が左褄をとって歩くところから》芸者になる。「此の人、日本橋に―・って」〈鏡花・日本橋〉

「女中は廊下の突当りから、厠らしい杉戸の前を過ぎて、瓦塔口(がとうぐち)の襖ふすまをあけ、奥まった下座敷しもざしきの四畳半に案内した。」 瓦塔=五重塔を模した焼き物

「沓脱石の上に両足を投げ出して煙草へ火をつけた。」 沓脱石 くつぬぎ 

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纏頭 てんとう またはてんどう、チップのこと。心付け。「駕籠舁き人力車夫等への―にも思い切った額を弾んだ」〈谷崎・春琴抄〉もらった衣服を頭にまとったことから。「舞ひはてては必ず―をこひけり」〈著聞集・二〇〉

門墻 もんしょう 門と垣。転じて、家の出入り口。かどぐち。

 おうち 栴檀の古名 https://costume.iz2.or.jp/color/463.html

麦門冬 りゅうのひげ 麦門冬湯は空咳に効くが成分は麦門冬(りゅうのひげ)龍角散は化石の鹿角。前者は植物で、後者は動物由来。でも2つとも「龍」のパーツ。

「樹々の梢から漏れ落る日の光が厚い苔の上にきらきらと揺れ動くにつれて、静な風の声は近いところに水の流でもあるような響を伝え、何やら知らぬ小禽の囀(ことりのさえずり)は秋晴の(あした=夜明け、早朝)に聞く鵙もずよりも一層勢が好い。」

「鼠セルの二重廻」 下図の2 二重回しのマント

山高帽、二重廻しのマント ・明治 大正 昭和時代・洋風の摂取 日本服飾史 資料・風俗博物館~よみがえる源氏物語の世界~
http://www.iz2.or.jp/fukushoku/f_disp.php?page_no=0000187 より引用

「雨はいつか歇(や)んで、両側とも待合つづきの一本道には往来(ゆきき)する足駄(あしだ)の音もやや繁くなり、遠い曲角の方でバイオリンを弾く門附(かどづけ)の流行唄が聞え出した。」

門付け 門附 日本の大道芸の一種で、門口に立ち行い金品を受け取る形式の芸能の総称。門付の発祥の根本には、季節に応じて神が祝福に訪れるという民間信仰があった。

「長火鉢にはぴかぴかに磨いた吉原五徳よしわらごとくに鉄瓶てつびんがかかっている。」

吉原五徳(よしわらごとく)
長方形に格子組みされた4本足の枠の上で鉄瓶などを乗せる五徳本体が左右にスライドする機構を持つ、長火鉢用の五徳。

囲炉裏・火鉢の五徳(吉原五徳)の販売  by囲炉裏本舗

派出婦 求めに応じ随時出向いて、家事手伝いなどをする職業の婦人。

転寝 うたたね

(ものう)稽古唄や物売の声につれて、狭間(ひあわい)の風が窓から流れ入って畳の上に投げ落した横顔を撫なでる心地好さ。」

狭間 ひあわい 建て込んだ家の間の、ひさしとひさしとが接するような、狭い所。

火酒 蒸留してアルコール分を多くした酒。ウオツカ・ウイスキー・ブランデー・ジン・焼酎(しょうちゅう)など。蒸留酒。


ところで、この小説には東京の坂が頻出する。

高力坂 「本村町の電車停留場はいつか通過ぎて、高力松が枝を伸のばしている阪の下まで来た。市ヶ谷駅の停車場と八幡前の交番との灯が見える。」

神楽坂 

逢坂 「君江は問われてもはっきり住処は知らせなかったが、唯市ヶ谷辺だと答えて、一緒に外濠を逢阪下おうさかしたあたりまで歩いて行く中、どうやら男の言うままになってもいいような素振そぶりを示した。」

市ヶ谷八幡女坂 「女はスタスタ交番の前をも平気で歩み過るので、市ヶ谷の電車停留場で電車でも待つのかと思いの外ほか、八幡の鳥居を入って振返りもせず左手の女阪を上って行く。」

いよいよ不審に思いながら、地理に明い清岡は感づかれまいと、男の足の早さをたのみにして、ひた走りに町を迂回うかいして左内阪さないざかを昇り神社の裏門から境内けいだいに進入って様子を窺うと、

二人は夜ふけの風の涼しさと堀端のさびしさを好い事に戯れながら歩いて新見附を曲り、一口阪ひとくちざかの電車通から、三番町の横町よこちょうに折れて、

予め行先を教えられているので、塩町の電車通から曲って津の守阪つのかみざかを降りかけた。

市ヶ谷合羽阪を上った薬王寺前町の通に開業している医者が、応急の手当をしてくれた

「そうすると、あすこが安藤阪で、樹の茂ったところが牛天神になるわけだな。」

以上です。いつも読んでいただきありがとうございます。

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