the zurich axioms ルールを見出したという陶酔や幻想に浸るな

読書 邦題「マネーの公理」。スイス人は賭ける、その心構えとか投資哲学。ウォール街のスイス人達の間でのルール。投機に関する本、「投資本ではない」これは明記してほしかった。装丁が立派な割に、正直それほど。これが投機家のバイブルと謳ってあるのだが。気に入ったところを抜書き。

・「賢明な方法はリスクを回避することではなく自らをあえてリスクに晒すことである」特に目新しいことではない。この本全体を通していうと、一言で済みそうなことを冗長に書いていてその所為か自称体育会系の精神論の説教を聞かされているようだ。相場は心理学だから精神論で良いのだけれど、物分りが悪い人にお話をしているかのようにややくどい気がする。

・「常に早すぎるほど早く利食え」これは大きな痛手を負うとそうなる。何度かスッテンテンにはなったが、それでも長期投資のほうが良いと考えている。この本は長期投資は「強欲」であるかのような前提で書かれ、強欲と戦う、みたいな筋で書いてあるのでそれはそれとして理解(個人的には短期で利確するほうが強欲という考えも持っている)。冒頭、投機と投資とは不分別としながら、そもそもこの本は投資について書かれているのではなく「投機」に偏して書かれている。読売ジャイアンツ礼賛本やカープ礼賛本のようにジェシー・リバモアをファンのようにちょいちょい取り上げたり。

・短期的な値動きは予想できない。忘れがちだが大切。

・「ルールを見出したという陶酔や幻想に浸るな」。これはいい言葉。「カオスの中でパターンを見出すのは無駄」。例えばテクニカル分析など。「秩序の幻想」と言う表現はイカしてる。訳者は素晴らしい。この言葉は既存の思い込みを暴力的に否定する。「カオスの中に何かが見える、という投資アドバイザーは警戒すべきだ、ということだ」「秩序あるアプローチ、管理できるという感覚、を売り物にしている」そんなものはなくて運だ。この記述は普遍的でとても教訓的。こうすれば良い私のルールブログをよくお見かけしますが、ああなんでもないです。物言えば唇寒し秋の風。

・ポーカーなどで連勝が続いたときに、「ついている」などと思うな。確率は過去の事象を引きずらない、これも特に目新しいことではない。

・「忠誠心やノスタルジーといった感情のせいで、下落相場に捕まってはいけない」気に入った商品や愛着は銘柄選別の動機になる。愛着を持ちすぎて売る機会を逃してはいけない。長期投資の場合、長く連れ添うとこれがありうる。機動力を失わないように。根っこは、切り落とせないほど太く成長させてはいけない。

・「直観は説明できるのであれば信頼できる」「直観と希望を混同するな」

・「神様が自分の財布を守ってくれると思うのは浅はかである」これには違和感がある。神社に欠かさず詣でて、世界、いや宇宙とイルカとクジラの平和と共産主義の滅亡とトランプ大統領の再選を願うついでに、お財布のことをねがっちゃだめですか。

穿った見方をご容赦いただくと、著者は運命論的なプロテスタントなのだ。題がスイスのチューリッヒの金言なのだし。つまり、免罪符買えば助かるグッズ商法のローマ・カトリックへのアンチ感情が、ツヴィングリと言う人物を中心に運命論的なプロテスタント(免罪符買えば助かるというのは間違い、運命は最初から決まっている)をチューリヒに生じせしめたのだから。神様がお賽銭ごときで自分の財布を守ってくれるはずがない、それはプロテスタントであれば理解できる。アメリカ人の多くを占めるプロテスタントは、日本の「お守り」や「おふだ」に良くない感情を抱くのだろうか。ところで私はアイドルのグッズを買ったところでなんのご利益もないことは高校生の時に経験的に知っている。

ツヴィングリ wikipedia

・「楽観は催眠の魅力を持っている。甘い歌声が船員を惑わせて船を挫傷させてしまう、セイレンのように。強気と弱気は相半ばするはずなのに、記事は楽観的なものが多く、個人的には投機は儲かるという楽観に基づいた行動でありこれはパラドクスである。」

・「大多数の意見は無視しろ、それはおそらく間違っている」いい言葉。コロナ騒ぎを振り返るとしっくり来る。世界滅亡だといまだに信じている人がいるけれど。

・「投機の流行を追うな、何かを買う最高のときは誰もそれを望まないときである。」いい言葉。逆張りこそ最も行動しにくく、最も効率的なものだろう。「クーラーは冬に買え」あれ?「セーターは夏に買え」あれ?「こうもり傘は晴れに買え」?違う気がする。

・「長期投資に根をおろしてはいけない」とジェシー・リバモアの言を引用している。

ジェシー・リバモアをやたら原理のように信仰する投機家が一定数世の中にいるのは知っているのであまり変なことは言えませんが、リバモアの伝記小説(エドウィンルフェーブル著)を読んだ限りでいうと頭の良い相場中毒、というイメージで私にはちょっと。

まとめ。長期投資家が喜ぶ本かどうかは甚だ疑問ですが、随所に面白いところがあります。In のタイミングOutのタイミングなど参考になることが書いてあるかと期待しましたが、既に一度は考えたりしたことが多かったです。

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