ソビエト連邦では個人副業(家庭菜園)が農産物の3割を占めていた

ロシアの農業

youtubeを見ていたらおすすめに出てきた「ロシアの農業の講義」

見ていたら面白く、とてもわかり易いのでメモしました。予備校の先生だろうか。勝手にゴメンナサイ。

160 ロシアの農業 地理の羅針盤第17話

ロシアの農業をみるには算数問題のように補助線を引く。

サンクトペテルブルク、イルクーツク、オデッサの三角地帯で農業が盛ん。

それ以外の部分は放牧・林業など。

農業の北限は赤線。ほぼその北側でトナカイの放牧。

三角形の角の二等分線を引いて、その上側は混合農業(寒い地域でも育つ作物 ライ麦、えん麦、じゃがいも、牛)、南側は小麦、企業的農業が行われる。ウクライナやロシアの南にはチェルノートが広がっているチェルノーゼム(黒土)

三角形の左端にあたるバルト三国では酪農が行われる。

ロシア(南部)やウクライナでは油脂の原料のひまわり。

ロシアは林業国でもある。木材伐採量では世界5位(薪炭用含む)、用材つまり針葉樹の伐採量では世界2位。

ソビエト崩壊前後で集団農業はどう変わったか。

ソ連は集団農場(コルホーズ)、国営農場(ソフホーズ)で営まれ、柔軟性のない計画経済、地力の低下、労働意欲の低下などから収穫量が低下、ソ連の晩年は穀物輸入国に転落。

ソ連崩壊後の集団農場の労働者を新生ロシアの「農業企業」が吸収し、収量改善し輸出国に至る。

個人副業経営(農業生産額の1/3が副業?)

現在のロシアの農業の特徴。「個人副業経営」が耕地の5%程度で35%の生産額を占める。今のロシアでもソビエト連邦時代においても比較的生産効率がいい。郊外の別荘=ダーチャでの菜園経営(国家の農業生産額の1/3が副業とはどういうこと?)

以下は触発されて自分で調べたこと。農業生産額の1/3が副業とはどういうことだろう。

社会の勉強が嫌いでした。ユーチューブの先生なら、立ち止まって調べたり繰り返し聞いたりできるからすんなり頭に入ります、ありがたや。ザーッと読むということがいまだにできず、調べながら見ました。わかるまで調べなければ気がすまない性格の私にはユーチューブの授業が楽しいけど、時間消費してすこし辛い。

農業生産額の1/3が副業、家庭菜園(private garden plot)が占めるとはどういうことかを解明していきます。

チュルノーゼム

ちょっと脇道にそれます。農業が盛んな黒土地帯をチェルノゼム(ロシア語: чернозём[tɕɪrnɐˈzʲɵm])といいます。チェルノブイリ原発事故のチェルノと同じスラブ語の語幹で「黒」の意味。ゼムとかゼムリャは「土地」

チェルノブイリの語源は、「黒い草」
чо́рне (čórne, “black”, neuter of чо́рний (čórnyj)) + билля́ (bylljá, “grass blades or stalks”).

ソビエト連邦で穀物輸入国に転落、ロシアになって穀物輸出が急増。背景は?

https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2018/attach/pdf/190219_01.pdf

上記資料(ロシアの農業・農政 -世界最大の小麦輸出国となった背景-  農林水産政策研究所 上席主任研究官 長友謙治)より引用

ざっくりと近況です。ソビエト連邦時代の農業がダメダメで穀物輸入国に転落し、最近農業輸出国へと改善した背景は次のようになリます。資本主義的に集団化したことや作物を変更したこと、輸出港への動線の良い農地を開発したこと、になります。

  • アグロホールディング(農業組織)の形成。≒農畜産分野の企業グループ。
  • 飼料需要の縮小、養鶏や養豚の復活で飼料効率改善。逆に、牛部門(牛肉生産、酪農)は縮小。
  • 輸出港に近く有利な黒海周辺地域に小麦作付面積を拡大したこと。

個人的経営=住民副業経営 

ここからが私の関心事ですが、ソビエト連邦の農業において”個人的経営”とよばれた副業が、新生ロシアに現在も引き継がれ、少なからぬ役割を果たしていることです。じゃがいもや野菜はソビエト連邦時代に個人が家の付属地を家庭菜園(private garden plot)にして作ることを認められた商品作物で、小麦は大規模にコルホーズで、などと産物の分業がありました。ソビエト連邦の個人的経営ではじゃがいもが作られ、新生ロシアでも住民副業経営として引き継がれました。農業組織にインテグレートされ集団化しつつあるようで住民副業経営の割合は減少傾向です。

ソビエト連邦→ロシアへの変化の要点。コルホーズは農業組織に。住民副業経営は引き継がれる。
コルホーズ等は有限責任会社、株式会社等、市場経済下の法人組織に衣替え → 「農業組織」へ
住民副業経営(家庭菜園)は、引き続き(特に移行期(エリツィンの頃)において)野菜や畜産物の供給に小さからぬ役割。

つまり副業の伝統は今も続き大きな役割を果たしているのが、ロシア特有の農業のしくみとなります。副業っていうとなんだか日本のイメージだと片手間感(封筒作ったり傘をはったり)が漂いますが、ソビエト連邦では表向きには言わない、主たる収入源でした。家庭菜園も、積み上がると農業生産の35%になるというのが面白く思いました。

ソビエト連邦時代には個人の副業は禁止されたり緩められたりします。社会主義の建前ですから。

社会主義であるソビエト連邦のコルホーズは二重構造で、社会的経営と個人的経営が併存。表向きのコルホーズは社会主義の象徴的存在であったが、実は国家の農業生産の35%を私的家庭菜園(いわば自由経済)に頼っていた。

我が国の公務員は副業禁止です。国がまるごと公務員みたいなイメージの社会主義国ソ連で副業経営が存在し、それが主たる収入源であり、しかも「家庭菜園」で作られる、というのが意外でした。家庭菜園からできる作物が国内の農業生産の35%をあげていたというのがなんだかしっくりこないので文献にあたります。

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/5034/1/KJ00000112974.pdf

ソ連邦における個人的副業経営 : とくに社会的経営との関係において 木村汎著 を読んで勉強。

1960-70年頃の分析になります。ソビエト連邦の学者の苦しまぎれの言い訳に対し厳しく突っ込むあたりが秀逸で、失笑しつつ読みました。社会主義でご法度であるべき自由経済が、しかも個人的な副業という性質をもつものが、コルホーズに内包されているにも関わらず、それを自由経済とは呼ばず、明らかな二重構造であるのに「社会主義の特殊なシクミである」と言い放つソビエトの学者たちの冷や汗が目に浮かぶ。クソみたいな社会主義理論など私にはどうでも良いのですがお笑いとして見るぶんにはなかなか面白くできていて筆者のユーモアで転がしてあります。真面目なだけに一層可笑しいということを体現するのが社会主義の理論です。

社会主義は「私有の禁止」と「国有化」を墨守する”たいそう立派なもの”であると伝聞しておりましたが、ソビエト連邦の家庭菜園では ①生産手段の私有 ②非計画的な生産 ③余剰生産物のコルホーズ市場での換金がOK でした。スターリン、フルシチョフやブレジネフの時代からすでにあり彼らは潰そうとしますが失敗します。

そりゃ作ったぶんだけ儲かるなら誰だって自由経済のほうに行きますわ。ソビエト政府の側からすれば立ち遅れた農業を背景に、認めざるをえない「必要悪」であるという立場で理論を組み立てます。にしても農業生産の35%が家庭菜園の個人経営に依存していたというのはあまりに大きく、ちょっと驚きました。共産主義や社会主義を心から嫌う私ですら、そんな自由経済を柔軟に内包するシクミであるとするならば案外悪くない、規制だらけの日本のほうが。。。などとちょっと思ってしまったのは内緒にしといて。というのも公務員のとき副業禁止でオカネあんまりなかったんよね。

ソフホーズとコルホーズだけが機能して幸せに暮らしているなどという絵空事を私の通っていた小中学校では教えていたが嘘っぱちでした。

ソビエトの学者は個人的副業経営は「新たな勢力や階層を産まない」のでOKと理論化して誤魔化していたようですが実質は私有であり自由経済です。もちろん、個人的な所有が増えそうだとわかれば制限を付ける。しかし、その結果農産物の生産性が下がり、価格が上がる。民にとって何もいいことは無いのです。スターリンとフルシチョフが個人的経営に対し制限を行い大失敗を経験しています。

家庭菜園で作られる作物には偏りがあって、先に述べましたが分業的に「じゃがいも」と「野菜」が家庭菜園で作られ、今のプーチンのロシア時代に変わっても、家庭菜園でじゃがいもをつくる分業の伝統は続いています。1965年の統計だと家庭菜園のほうがコルホーズよりはるかに生産性が良いと下の表に示されています。ソフホーズ、コルホーズに比べ、家庭菜園のほうが遥かに良い。まあ、コルホーズサボって家庭菜園に注力したりもあったでしょうし、自分が手塩にかけたものは良く作るでしょうし。

ソビエト連邦の学者がいうには、個人的経営は必要悪であり「過渡的な存在」であるにすぎず、個人的経営はコルホーズが将来”完成”するときには社会的経営に吸収され消滅すると理論付け、そうなることが「社会主義の進歩である」とし、期限無しでそうなることを予測しました。スターリンやフルシチョフの時代に個人的経営を強権的に抑圧し、大失敗した反省に基づいて個人的経営を実質認めざるをえなくなり、お花畑の見栄えの良さそうな表向きの理想を掲げる一方で、それをあえて達成の期限なしにしてしまうということの本質とは、取りも直さずまあ要するに「諦めた」ってことでしょう、デキッコナイス。

コルホーズ農民は、コルホーズからよりも個人的副業経営からの所得のほうが大きく占めていたということが私には意外なことでした。

我が国の公務員は副業は禁止ですが、家庭菜園を認めるコルホーズよりももっと社会主義的テイストが濃厚です。我々日本人は真面目ですから服務規程を守ります。安い給料で国民に奉仕、お金のことは気にしない・・・私の遠い記憶です。多分ロシア人は日本人より不真面目に違いない。

長文にお付き合いいただき誠にありがとうございます。

参考文献 

ソ連邦における個人的副業経営 : とくに社会的経営との関係において 木村汎

https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/5034/1/KJ00000112974.pdf

ロシアの農業組織の法人形態の変化と農業生産の回復 長友謙治 

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjce/53/2/53_2_23/_pdf/-char/ja

ロシアの農業・農政 -世界最大の小麦輸出国となった背景-  農林水産政策研究所 上席主任研究官 長友謙治

https://www.maff.go.jp/primaff/koho/seminar/2018/attach/pdf/190219_01.pdf

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