
- スコットランドではイエスをアイッ!っていう。語尾上げで。
- Aye, Aye, Sir!アイアイサーは日本語ではなかったわ
- 生返事の「あーい」ではなくアイッ!(語尾上げです)
- ayeの語源は「いつでも」
- まず、スコットランド語とは。
- ピジン言語とクレオール化とは
- スコットランドの地形と言語分布。ハイランドでゲール語、ローランドでScotsが使用される
- スコッツとスコットランド英語の違いについて
- Burgh(バラと発音)のEtymology
- Scots 話者分布
- スコットランド・ゲール語のYESはTha。
- 古ノルド語話者の分布。
- ノルマン人はノルマンディー地方から、つまりイギリスの南からやってきた北方人種。ノース人はスカンジナビアなど北から(混同注意)
- フランス語のYES「ウイ」の語源はthat
- 英語への仏語の影響
- A language is a dialect with an army and navy
- ヘブリディーズ諸島
- スコットランド言えばストーンサークル。巨石文化。
- グラスゴー・コーマ・スケールはグラスゴー大学の発案
- スコッティはscottieであって、scottyではない
スコットランドではイエスをアイッ!っていう。語尾上げで。
日本語会話のアイアイサー!が「了解!」の意味なので、語源は一緒か調べたら、船員の言葉として使われていたスコットランド英語です。
Aye, Aye, Sir!アイアイサーは日本語ではなかったわ
スコットランド語 aye=yes です。
はい(承知しました)上官に対する米国海兵隊や航空兵の「命令を受けたときの」返事なのだそうです。Yes, sirより「命令」に対する承知のニュアンスが入る。
イギリス議会では賛成のときに”Aye”を使うそうです。アイ!日本語っぽいです。
生返事の「あーい」ではなくアイッ!(語尾上げです)
我らが日本語の、ハイっ!に近いのか・・・
日本語の「はい」の語源は調べたけれどわかりませんでした。
ayeの語源は「いつでも」
ayeの語源は次のようになります。アイっ!は永遠に、いつでもの意味。アイッ!は「普遍の真理ッ!」なニュアンス。
インド・ヨーロッパ祖語の「永遠に」の意味から。中英語←古ノルド語←ゲルマン祖語←インド・ヨーロッパ祖語
From Middle English aye, ai, aȝȝ, from Old Norse ei, ey, from Proto-Germanic *aiwa, *aiwō (“ever, always”) (compare Old English āwo, āwa, ā, ō, Middle Dutch ie, German je), from *aiwaz (“age; law”) (compare Old English ǣ(w) (“law”), West Frisian ieu (“century”), Dutch eeuw (“century”)), from Proto-Indo-European *h₂eyu- (“long time”) (compare Irish aois (“age, period”), Breton oad (“age, period”), Latin ævum (“eternity”), Ancient Greek αἰών (aiṓn)).
中英語のaye 古ノルド語のei、ey、ゲルマン祖語 aiwa、aiwō(「常に」)(古英語āwo、āwa、ā、ō、中期オランダ語、つまりドイツ語jeと比較 )、 aiwaz( “age; law”)(古英語ǣ(w)( “law”)、西フリジア語ieu( “century”)、オランダ語eeuw( “century”)と比較)、インド・ヨーロッパ祖語 *h₂eyu-(「長い時間」)(アイルランド語のaois(「年齢、期間」)、Breton oad(「年齢、期間」)、ラテン語のævum(「永遠」)、古代ギリシャ語のαἰών(aiṓn)を比較)。
まず、スコットランド語とは。
ポールさんの動画を参考にしました。
スコットランド語は異なる民族の言語接触の歴史を反映し複雑です。スコットランド語は3要素からざっくり成るようです。Scots(西ゲルマン語群)が軸ですが、それはゲール語とノルド語の影響を受けています。分布に特徴があります。
スコットランド・ゲール語(ケルト系言語)・・・北西山岳部 アイルランドからスコッツ人がもたらした。スコッツ人はゲール語話してたんだ!

ノルド系言語・・・ノース人やバイキングなどがブリテン島を支配した時代の名残
Scots スコッツ(スコットランド語 西ゲルマン語群)・・・スコットランドの低地とアイルランド北部のアルスターで使用される

これらとは別に、Scotsと近縁のスコットランドイングリッシュという定義があります。スコットランドアクセントの英語。Scotsは中英語のノーザンブリア方言からできたので、イングランド南部の英語と歴史は明らかに違います。
現時点では、スコットランドで使われる言葉は、スコットランドイングリッシュ、スコッツ、ゲール語の3つに区分されます。
古代、ゲール語が使われていたスコットランドに、中英語がスコットランドに入ってきてスコッツとなり、その後15世紀頃からイギリスの全国統一(スコットランドとイングランドの統一)とともに南部の英語と混ざり始めてできたのが新しいスコットランド英語、つまりそれらが全て均一に及んでいるのではないために地域的に偏在。古い順にゲール語、スコッツ語、スコットランド英語。

https://www.seijo.ac.jp/pdf/falit/200/200-12.pdf7世紀ごろ、イングランド北東部に住み、古英語のノーサンブリア方言を話していた「アングル人(Angles)」が、7世紀ごろ現在のスコットランド南東部に侵入してきた。当時は、ハイランド地方や島嶼部では、当然のことながら先住民族の「ピクト人(Picts)」や「スコット人(Scots)」)の話すスコットランド・ゲール語が優勢であった。ところが、1066年のノルマン人による「イングランド征服(Norman Conquest)」以後、ローランド地方には様々な言語接触があった。上層階級のアングロ・ノルマン人たちはフランス語を話し、その家臣たちは「古ノルド語(Old Norse)」の影響を受けたイングランド北部の英語方言を話していた。当時(9世紀以来)は、スカンジナビア半島を中心として活躍していたバイキングの一派、デーン人の支配下にあったからである。また、当時の自治都市には、北欧、北海沿岸の低地地方、フランスなどから商人や職人たちが大量に集まっており、彼らの話す言語との複雑な言語接触が繰り返されていたはずである。具体的には、イングランドの北東部を中心とした各地域の方言変種、古ノルド語、オランダ語、フランス語、それにスコットランド・ゲール語などが言語接触を起こし、ピジン化・クレオール化が繰り返され、これが古スコッツ語の原型であったと考えられる。
https://www.seijo.ac.jp/pdf/falit/200/200-12.pdf より引用
ピジン言語とクレオール化とは
Scotsは通商語としてひろまりました。通商語をピジン語といい、簡略化された文法や語彙からなります。「ワタシチュゴクジンアルネ」は中国人のフリをするステレオタイプな表現ですが、かつて通商語として横浜ピジン語というものが存在していました。通商のために現地人と貿易商人との間で通じる簡易言語を作ることをピジン言語、それが現地に広まることをクレオール化といいます。共通の母語を持たない同士が意思疎通に使う言語を別にLingua franca(リングワ・フランカ フランク王国の言葉)とも言い、その時代の権勢国の言葉が行政後になったり外交語になったりします。
ゼンジー北京と宮崎吐夢が外国人の真似をする動画2つをお示ししますが雰囲気としてはこんなので、3つ目の動画はガチの横浜ピジン語です。宣教師がききとりにくい日本語を言っているイメージです。定式化されたものとは知りませんでした。繰り返して聞くとわかってくるので実用性はありそうです。4つ目はピジン語の解説動画です。
スコットランドの地形と言語分布。ハイランドでゲール語、ローランドでScotsが使用される


スコットランドの地形は、左上(北西部)が山岳地帯(ハイランド)、それ以外が低地(ローランド)。ハイランドとローランドでそれぞれ、ゲール語、スコットランド語(Scots)が主に使用されます。境界があるのではなく比率のグラデーション。
もともと古代に先住ピクト人がいて、アイルランドからきたゲール語を話すスコット人と同化、843年にスコットランド王国が成立します。この時代スコットランド人はゲール語を話していました!。11世紀にノーザンブリア王国の北部がスコットランド王国の一部になります。それでもまだスコットランドではまだゲール語が広範に使用されました。
ノーザンブリア南部はデーン人支配をうけ、ノース語の影響を様々に受けます。

スコットランド低地にノーザンブリア方言が広まった経過についてです。
1)1069年から1070年の南部イングランドのウイリアム王による焦土作戦でノーザンブリアの貴族や人がスコットランドに(北に)逃げた。彼らのつかう中英語のノーザンブリア方言がスコットランドに伝わった。
2)Burgh バラという貿易都市がスコットランド低地の各地に王の勅令ででき、ノーザンブリア方言が通商語として使われ、それらがScotsを使用し、貿易都市を中心に拡めた。
1)ノーザンブリアはアングル人の土地でした。そのアングル人はユトランド半島からブリテン島の東岸に渡ってきた人たちです。スカンジナビアから来たデーン人の圧迫で追い出されてやってきました。下図オレンジ色アングル人(Angles)。アングル人とサクソン人がブリテン島にやってきたので彼らをアングロサクソン。

アングル人の住んだノーザンブリアの土地(下図 辛子色)に、またデーン人がやってきます。デーン人はユトランド半島からアングロ人とサクソン人を追っぱらって、今度はブリテン島に追っかけてきた。アングロサクソンに割って入るようにデンマークから来たデーン人(ヴァイキング)が占領し”デーンロー THE DANELAW”という国をノーザンブリアの南部に作ります(下図)。

上の地図の桜色の部分がDANELAW デーン王国とも。
ノースの住民はノース人(古スカンディナヴィア人)とアングロ・サクソン人が混合した文化を有しており、古英語を話す彼らは南イングランドの人々と意思疎通ができず、また貴族階層はデーンロウ時代からのデーン人にルーツを持つ者が主であった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E9%83%A8%E3%81%AE%E8%B9%82%E8%BA%99
北部の自治権を認めていた南部イングランドでしたが、ノルマン・コンクエストで南部がアングロサクソン王朝からノルマン王朝に変わると方針がかわり、ノルマン人のウイリアム王は「北への襲撃(Harrying of North)」という残忍な行動をとります。住民も家畜も全部焼き払って復活できなくする徹底ぶりでジェノサイドというキーワードもチラホラ文献によっては見られます(異説もありますが)。ノースのみでなくノーザンブリアのアングロサクソン領主も追放され、逃れてスコットランドに移住します。このため、スコットランドのエジンバラにノーザンブリア地域の古英語や北欧起源語を見出すことができます。
2)Burgh バラという自治貿易都市(王の勅許による)がスコットランド内の各地にでき、貿易商人がやって来ます。ゲール語話者がスコットランドから、デーン人支配下にかつてあった地域から、遠くフランダース地方やスカンジナビアからも貿易にやってきます。Burghはバラと発音し、エディンバラのバラと同じ綴りで語源はドイツ語のBurgと同じです。
Burgh バラという自治貿易都市では英語が共通語(通商語 ピジン語)になります。この英語はノーザンブリアの中英語を元としています。各地の言葉を取り入れながら成立し、これが地域に根づいたのがスコットランド低地に分布するスコットランド語、Scotsです。
スコッツとスコットランド英語の違いについて
15-16世紀ごろからScotsと英語とが混ざって書かれるようになります。イングランドとスコットランドの王位を初めて一身に兼ねた君主ジェームズ1世の活躍した頃です。スコットランド語Scotsと英語が混ざって書かれ始めた、それが現在の「標準スコットランド英語」に進化します。
まとめると、Scotsスコッツはスコットランド低地に英語が通商語として広がり始めた時代のノーザンブリア英語(中英語)、標準スコットランド語はその後、15-16世紀にイギリス全土が統一された頃、Scotsと統治の主体である南部イングランドが使用した英語が混ざったことに由来するもの。
<参考文献>



Burgh(バラと発音)のEtymology
From Middle English borwe, borgh, burgh, buruh, from Old English burh, from Proto-West Germanic *burg, from Proto-Germanic *burgz (“city, stronghold”).
ドイツ語のブルクと同じ語源です。
borough(バラと発音)と同じ語源で二重語です。
Scots 話者分布
スコットランドは断層によって地理区分ができています。


地形図と見比べてわかりますが、低地スコットランドにスコッツ使用者の密度が高いです。


次はアイルランド北部に集中するスコッツ話者(=アルスター・スコットランド語)分布域です。


スコットランド・ゲール語のYESはTha。
ゲール語(ケルト語系)話者は減少傾向にあります。同様にウェールズ語もケルト語系でどうにか残っています。とても長い地名がウェールズにあります。


2001年におけるスコットランドのスコットランド・ゲール語話者分布です。スコッツ語話者分布が低地であるのに対して、山岳部と島嶼(ヘブリディーズ諸島など)にゲール語話者が分布します。





古ノルド語話者の分布。










ノルマン人はノルマンディー地方から、つまりイギリスの南からやってきた北方人種。ノース人はスカンジナビアなど北から(混同注意)
南イングランドの英語は北フランスのノルマン人からの影響を受けます。ノルマンディ公(フランス北部)ウィリアムがイギリスにやってきてアングロサクソン系のイングランド王朝を破ってノルマン朝を開きます。ノルマン・コンクエストといいます。
そのときに北フランスからたくさん人を連れてきて支配階層になったので中世の英語はフランス語訛りになります(英単語の半数がアングロ=ノルマン語に由来するといわれる)。ノルマン人が持ち込んだ言語をアングロノルマン語(又はアングロフレンチ)といいます。支配階級が使い、行政語となり今も議会で使われます。アングロ=ノルマン語は最終的には英語に押されていきます。
フランス語のYES「ウイ」の語源はthat
スコットランド語の「アイ」とフランス語の「ウイ」の音とは似てるなと思って語源を調べましたが違うようです。「ウイ」はthat あれでした。
from Old French oïl (1100), compound of o (affirmative particle) and il (“he”). Cognate to Occitan òc (“yes”), from Latin hoc (“that”) . The semantic shift is calqued on Gaulish [Term?]: compare Old Irish tó (“yes”), Welsh do (“indeed”), from Proto-Indo-European *tod (“that”) (compare English that) (compare Catalan hoc).
英語への仏語の影響
英語の複数形にsを付けるのはフランス語の影響。もともとの古英語はfootをfeetと言ったり -sを付けない。
修飾語を後置する(ラテン語っぽい)のはフランス語の特徴。attorney general(司法総裁)、heir apparent(法定推定相続人)、court martial(軍法会議)、body politic(統治体)は英語として現在使われる。
現在もイギリスの議会での法案承認や法制化勅許の際にアングロ=ノルマン語の定型文を用いるのだそうです。殆ど仏語ですね。
Soit baille aux Communes(「庶民院に送付せしめよ」 貴族院から庶民院への法案送付時)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AD%EF%BC%9D%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3%E8%AA%9E
A ceste Bille (avecque une amendement/avecque des amendemens) les Communes sont assentus(「この法案に(修正付きにて)庶民院は同意せり」 庶民院を通過した法案の貴族院への再送付時)
A cette amendement/ces amendemens les Seigneurs sont assentus(「この修正に貴族院は同意せり」 庶民院から貴族院へ再送付された法案の修正部分が貴族院で同意されたとき)
Ceste Bille est remise aux Communes avecque une Raison/des Raisons(「この法案は理由を付し庶民院へ差し戻す」 庶民院による修正部分に貴族院が同意しなかったとき)
Le Roy/La Reyne le veult(「国王/女王そを欲す」 公法案勅許時)
Le Roy/La Reyne remercie ses bons sujets, accepte leur benevolence et ainsi le veult(「国王/女王良民の奉仕を多としかくのごとく欲す」 歳出法案勅許時)
Soit fait comme il est désiré(「望まるるがままになさしめよ」 私法案勅許時)
Le Roy/La Reyne s’avisera(「国王/女王深慮せん」 勅許保留時)
A language is a dialect with an army and navy
「言語」と「方言」とに明確なちがいはありません。上の警句「言語とは、陸軍と海軍を持つ方言のことである」は、強力な軍隊を持っていれば「言語」、もっていなければ「方言」というふうになりがちであるということへの皮肉交じりの言い回しです。
言語なのか方言なのかという議論は恣意的に行われることに注意が必要。
ヘブリディーズ諸島
ヘブリディーズ諸島は、スコットランド最大のスコットランド・ゲール語話者密集地で下図の黄色いところがゲール語の最後の砦。ヘブリディーズの意味「Innse Gall」は『異国人の島』を意味。ノース人(ノルド)による占領と支配の時代にノース人からみた異国人と言った本質はノース人とゲール人の混血人を指しているそうです。
hebrides、ラテン語だと後置で「ヘブライ人の」???違いました。失われたユダヤ支族ではなかった・・・
Etymology
From Latin Hebudes or Haebudes, with u likely turned to ri by scribal error. Earlier origin unknown. Compare Ancient Greek Ἕβουδαι (Héboudai), islands mentioned by Ptolemy and Pliny, likely the Hebrides.


スコットランド言えばストーンサークル。巨石文化。
面白いHPを見つけました。イギリスの巨石遺跡を旅行されたほあぐらさんのページ。
グラスゴー・コーマ・スケールはグラスゴー大学の発案
GCS 意識障害のレベルを評価するグラスゴー・コーマ・スケールは、グラスゴー大学で1974年に発表されました。実は今日までグラスゴーの位置をしらなかったw




スコッティはscottieであって、scottyではない


スコッティはスコットさんの愛称で、Scots(スコットランド語)での正しい綴りです。-yではなく、-ieと綴ります。スコットというアメリカ人の会社「Scott社」と山陽パルプが合弁してスコッティを販売、1986年からScottieにブランド統一します。親会社の山陽国策パルプと十條製紙とが合併し、最終的に日本製紙クレシアになります。十條製紙系のクリネックスブランドと、山陽パルプ系のスコッティブランドを現在、同じ会社が売っています。紙パルプ業界は「新聞、印刷・情報用紙減少加速」によりちょっと大変なようです。


調べ始めると止まらなってまとまりなくてゴメンナサイ。最後までお読みくださりありがとうございます。
コメント
It’s so informative post.
Thank you friend for this information.
Thank you for reading. I get interested one after another when I’m doing research. I’m sorry that the text is long.