刀を表すいろいろな外国語

62シミター症候群黄.jpg
<標準外科学(第9版)(株)医学書院 2009年 著者:川田志明他>

胸部レントゲンでこのシミターの刀身みたいな陰影が右肺に見える場合、シミター症候群といって、部分肺静脈還流異常症の所見。肺静脈の一部が心臓(左心房)に戻るのではなく直接下大静脈に注ぐ、その異常な肺静脈がシミターの刀身に見える。

シミター症候群の語源を調べていたら、刀を世界でどう呼ぶか気になり始め、脱線して片っ端から調べていたらドツボにハマりました。


さて、中近東の少し湾曲した刀のことをシャムシールといいます。それを西洋ではシミターという。シャムシールはイラン語(ペルシア語)でライオンのシッポの意味。三日月刀と同じく日本刀も湾曲していますが、湾曲している刀は切る動作に利点があり、直刀やフェンシングのエペみたいなのは突き刺す用途。

wikipediaより引用

Etymology (wikitionary https://en.wiktionary.org/wiki/scimitar
First attested in 1548.

From Middle French cimeterre (15c.) or directly from Italian scimitarra, possibly from an unknown Ottoman Turkish word, ultimately from Persian شمشیر‎ (šamšir, “sword”).

シャムシールからイタリア語シミターラ、そしてシミター。。。シャムシールとシミターは同じもの。

https://www.iwanami.co.jp/files/moreinfo/3369910/map.pdf より引用

sword(刀・剣)に相当する単語にはシャムシール系(ペルシア語)、キリッツ系(トルコ語)、スラブ圏のMeč(ゲルマン祖語由来)、ギリシア語系spathiやspade、西フリジア語・古英語に由来するswordなど色々あります。まずシャムシールから。。


<シャムシール系>ペルシア語系

ペルシア語 شمشیر シャムシールはさらにパルティア語に遡ります。パルティア時代にはパルティア語とアラム語が使われ(アラム語はアケメネス朝ペルシアの公用語)サーサーン朝になってからもアラム語は使われました。3世紀までの石碑はアラム語、以後はパルティア語。アラム語はイエス・キリストが喋っていたと言われる言葉で7世紀にアラビア語に押されるまではシリア地方で中東全体で使われました。アラム語の系統になる言語はレバノンで今も使われています。

Etymology
From Middle Persian (šmšyl /šamšēr/), ‎ (šfšyr /šafšēr/, “sword”). Cognate with Parthian(sfsyr /safsēr/, “sword”). Compare Iranian borrowings Old Armenian (suser, “sword”), Classical Syriac (sap̄sērāʾ, “sword”), Jewish Babylonian Aramaic (sap̄sērāʾ, “sword”), Ancient Greek σαμψήρα (sampsḗra, “foreign sword”), and possibly Italian scimitarra (“scimitar”).

→ Ottoman Turkish: شمشیر‎ (şemşir, şimşir)
→ Middle Armenian: շիմշիր (šimšir)

アゼルバイジャン語 şəmşir トルコ系のqılıncも使う

ウズベク語 shamshir qilichも使う。

タジク語 Шамшер Şamşer

ウルドゥー語・シンド語(←パキスタン) تلوار (シャムシール)

クルド語 Şûr (西イラン語に含まれる)

アルメニア語 սուսեր 発音 suˈsɛɾ sword, foil, rapier, glaive


<tur>

アルメニア語 թուր 発音 tʰuɾ From Proto-Indo-European *tōrh₁-, from *terh₁- (“to rub, turn; to drill, pierce”), with an especially close cognate in Ancient Greek τορός (torós, “piercing”).

pashto パシュトー語(アフガニスタン東南部、パキスタンの西部に話者分布)توره tura インドヨーロッパ語族のイラン語派の東語群に属す。

パシュトゥーン人は緑色 wikipedia

<トルコ語 キリッツ系>

https://www.kilicfiyatlari.com/oluklu-yalmanli-kilic.html より引用

トルコ語 kılıç キリッツ From Old Turkic kılıč, from Proto-Turkic *kɨlɨ̄č (“sword”).

カザフ語 Қылыш (発音 Qılış

キルギス語(タタール語) кылыч From Proto-Turkic *kílïĺč (発音 Kılıç)

トルクメン語 Gylyç (中央アジアのトルコ人をトルクメン タークメンという)

ウイグル語 قىلىچ qilich

Turkic Languages distribution map.png
By GalaxMaps – Own workSource maps: Map of the distribution of Turkic languages across Eurasia. wikipediaより引用

<Meč系>(ゲルマン祖語 mēkijazから)

セルビア語・クロアチア語・ボスニア語mač (ゲルマン祖語 mēkijazから)

Mac na srpskom

スロベニア語 Meč

ポーランド語 miecz (ミエチュ)※szablaはsaber、szpadaはskewer

チェコ語 Mečとšavleとšimširとが使われる。メッチュはスラブ、šavleはサーベル、シャムシールはFrom Ottoman Turkish شمشیر‎ (şimşir).

スロバキア語 meč šabľa dýka kord

ベラルーシ語 меч (発音 mieč)

マケドニア語 меч meč

フィンランド語 miekka (From Proto-Finnic *meekka, borrowed from Proto-Germanic *mēkijaz.)

ウクライナ語・ロシア語 меч mech

エストニア語 mõõk (直刀)※エストニア語はウラル・フィン語の系統でフィンランド語に近い


<kard系>分布からフィン・ウゴル語系かと思ったら、ペルシア語のナイフに由来と記載あり。

ハンガリー語 kard (From an Iranian language, compare Ossetian кард (kard), Persian کارد‎ (kârd, “knife”).)

ポーランド語 kord

リトアニア語 kardas

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/87/Uralic-Yukaghir.png

<その他のバルト地方>

ラトビア語 zobens ※インド・ヨーロッパ語族バルト語派に属する。


<ギリシア語spathi系>

ギリシア語 spathi

アルバニア語 shpatë (語源は英語のspadeと同じ、古くはインドヨーロッパ祖語 トランプのスペードは剣のことだった)

カタルーニャ語 espasa

バスク語 ezpata

コルシカ語 spada

ガリシア語 espada

スペイン語・ポルトガル語 espada

フランス語 épée.

ハイチ語 nepe フランス語クレオール化


<swordにつながる、古英語・フリジア語系統>

西フリジア語 swurd (From Old Frisian swerd, from Proto-West Germanic *swerd, from Proto-Germanic *swerdą, possibly from Proto-Indo-European *seh₂w- (“sharp”).)

ノルウェー sverd

デンマーク語 sværd

オランダ語 zwaard

低地ドイツ語 Sweerd

ドイツ語 ルクセンブルク語 Schwert

英語 sword

アイスランド語 sverð 

スウェーデン語 svärd

イディッシュ語 שווערד shverd ※中高ドイツ語(ドイツ語)にヘブライ語を加えた言葉で、アシュケナージ系ユダヤ人が用いる。ラインラント地方ではじまり、彼らはリトアニアやポーランドに移住しシュテットル(都市)を形成。ホロコーストにあい、現在はイスラエルやアメリカに話者が多い。超正統派ユダヤ教ではイディッシュ語で生活を送ることが多い。(wikipedia)


<スコッツ、ゲール語系> 

アイルランド語 claíomh

スコッツゲール語  claidheamh

ウェールズ語 cleddyf 

ちなみにクレイモアはスコットランドの高地人がイングランドとの戦いで15-17世紀に使用した大剣のことで、Claymoreの語源はスコットランド・ゲール語のclaidheamh mór「大きな剣」から来ています。

クレイモア Douglas Whitaker – http://en.wikipedia.org/wiki/Image:ClaymoreHighlanderReplica.jpg

sabre系>From Proto-Slavic *sabľa, from a Turkic language.

セイバー

Rama, CC BY-SA 3.0 fr, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=232306による 

柄に保護用の「護拳」があり、騎兵が使用、走りながら「切る」用途。

英語、アストリア語、バスク語、カタルーニャ語、フランス語、イタリア語、レオン語、ポルトガル語など。


<タルワール系>サンスクリット由来

インドのタルワール。1806年のもの。
インドタルワール / 1806年のもの。 オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアのArchit Patelさん  

ヒンディー語 तलवार talavaar

パンジャブ語 تلوار • (talavār) From Sanskrit तरवारि (taravāri). 

ネパール語 Taravāra

グジャラート語 તલવાર Talavāra

マラーティー語 तलवार Talavāra

ベンガル語 তরবারি Tarabāri 

(その他のベンガル語のswordに当たる単語)
খড়্গ Khaṛga 
অসি Asi sword
তরত্তয়াল Tarattaẏāla sword, scimitar
তরবার Tarabāra brand, scimitar, sword, glaive, spit, bilbo
খণ্ডা Khaṇḍā sword
করপাল Karapāla sword, scimitar
তলোয়ার Talōẏāra sword
তরোয়াল Tarōẏāla sword, blade


<Kukri>

ネパール語 खुकुरी khukurī ククリ インド亜大陸で使われるmacheteに由来

グルカ兵(ネパール兵)が使うことで有名なあのククリ。英語圏ではグルカナイフとも呼ばれる。反りが日本刀やシャムシールなどと反対の”内反り” ネパールでは神聖な道具、神として崇拝対象

Knife (Kukri) with Sheath MET 36.25.831a b 001 Apr2017.jpg

<フィリピン系>tabak

フィリピノ語 tabak

中央ビコール語(オーストロネシア語族)tabak

Bikol Sentral language map.png
中央ビコール語が使われる領域

タガログ語 tabak

tabakはboloナイフとも呼ばれる、ジャングルで農具として使用され、戦闘時にも使われた。


<Golok>Gulok Gullock とも。マレー諸島で使用される農具のこと。boloと同じ

Golok インドネシア マレーシア フィリピン

Golok naga indonesia.jpg
A traditional Indonesian golok wikipediaより引用
Location Malay Archipelago.png
Malay Archipelago 

<parang> ※ナイフのことでswordではない。parangが戦闘で使用された歴史はない、という記事がある一方で、インドネシアではマーシャルアーツsilatの集合に含まれる。parangの変種がGolok。

Parang.JPG

<インドネシア・マレー系のpedang>

インドネシア語 マレー語 pedang 

ジャワ語 pedhang

スンダ諸島 pedang


<南インド>日本語に似ている説あり

カンナダ語 ಕತ್ತಿ katti 

シンハラ語 kaḍuva

タミル語 வாள் Vāḷ

テルグ語 కత్తి Katti


<東アジア>

日本語 刀 katana tou


<ラテン語>

ラテン語 gladio gladius spatha ローマの短剣

Etymology
Possibly from Gaulish *kladyos (“sword”) (compare Old Irish claideb (“sword”), from Proto-Celtic *kladiwos (“sword”), from Proto-Indo-European *kelh₂- (“to beat, break”). Cognate with Latin clādes, clāva, percellō.

Uncrossed gladius.jpg
ポンペイのグラディウスのレプリカ wikipedia Rama

英語 gladiator グラディエーターは剣闘士


<東南アジア>

モン族 rab ntaj

クメール語 ដាវ dav

ラオ語 ດາບ dab

ビルマ語 ဓား dha:

タイ語 Dab

Krabi Krabong Buddhai Swan 1.jpg
By Kru Tony Moore – Own work wikipedia “Krabi Krabong sword” タイの武術 シャム王国のマーシャルアーツから。

ベトナム語 thanh kiếm タンケンと聞こえる。

ベトナム共産党が文盲をなくすために廃止した漢字「チュノム 字」で元々はどう書くか。チュノム辞書に当たる。thanh に該当するチュノムは清、青、聖その他。kiếm は剣に間違いないだろう。中国の借用語をチュノム表記したらしいので、関羽愛用の青龍偃月刀みたいなものだろうか。

参考 https://www.chunom.org/


<その他、どれにも似ていない>

ジョージア語 ხმალი (発音 khmali)From Old Georgian ჴმალი (qmali).

へブライ語 חֶרֶב khérev From Proto-Semitic *ḥarb-.

モンゴル語 сэлэм セレム From Proto-Mongolic *seleme. Probably derived from Tungusic.

Tungusic map unlabeled.svg
By Noahedits – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91205514 ツングース語のシベリアでの分布

台湾アミ語 ブヌス


<東ポリネシア>

マオリ語 hoari 東ポリネシア諸語のひとつ。クック諸島マオリ語、トゥアモトゥ語、タヒチ語と深い関係

ハワイ語 pahi kaua  pahi =knife kaua=軍(From Proto-Polynesian *tau‘a.)

オーストロネシア語族( by Maulucioni )wikipedia

Austronesian languages.PNG

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