陰キャでチー牛でオタクの私が何を勘違いしたか、911に乗り始めたのが2014.2月、かれこれ10年が経過したので振り返ります。まず、今もって陰キャでチー牛のまま、淡い期待を抱いたものの、ポルシェ911に体質改善効果は認められませんでした。自然吸気3.8リットル水平対向6気筒エンジンは、エコだのSDGsだのとうるさくなる前の時代の代物。大排気量で400馬力、時速308キロ出る割にリッター11の燃費。車体の随所に軽金属を使ってあるため軽量。申し訳程度にアイドリングストップがついていますがキャンセルして使っていません。マニュアルトランスミッション、右ハンドルに拘りツッフェンハウゼンにオーダーメイド。輸出港エムデン、スエズ、マラッカ、輸入港三河、豊橋。それらの位置を世界地図で眺め、今どこにいるかと指折り7ヶ月待ちわびました。
911の点検費用、保険は普通の車と比べて大差ないものの部品は滅法高い。車体・構造は剛性感がありしっかり作ってありますが、内装に力を入れていないのは明らかで、サンバイザーのヒンジのプラスチックが割れ、交換に数万円と言われ呆れました。エンジンマウントのPADMがたったの22000キロ走行で片方壊れ、交換した際に25万円かかりもっと呆れました。PADMは磁性流体の粘度を電磁的に可変する機構のエンジンマウント。それ以外には目立った故障はありません。
レースの栄光の歴史、それらの織りなす神話をファンは共有しています。かつてレースで活躍した名車が所狭しと展示されたポルシェフェスティバル(PEC東京 2023年)に参加しました。1948年にポルシェ911の元祖であるポルシェ356が発表されてから75周年の祭典。ルマンでポルシェが連勝を重ねた頃の往年のドライバー、ジャッキー・イクスさんにもお目にかかりました。彼はポルシェ神話に彩を添える神の一人。見聞せし神話の世界が目の前に示現し神々が恭しく降臨されたのでした。
そのフェスに各自お気に入りの911で全国から乗り付け、評価し合うコンテストも催されました。いかに篤い信者であるかヘンタイ度合いを競い、それぞれの自己満足を生暖かい雰囲気で讃えあうもの。911原理主義者たちが、日頃隠匿せし自己陶酔をここぞとばかりに白日の下に晒し、まるで褒め合いクラブ、あるいは宗教大会のような薄気味悪い雰囲気を醸しつつ進行していきました。例えばNHKのど自慢の観客が、いかなる音痴の自己陶酔であろうと失笑を堪えて喝采をおくるように。同好者同士で勢いそうなるのは仕方ないにしても、10年間内向的変態として自己完結し、このようなミーティングを避けて来た私には理解し難い、開けっぴろげな陽キャ変態達による宴でした。珍しい911や公道を走るのが大変そうなスパルタンな911、あるいは改造を施した911など、およそ自己満足としか思えぬ特徴をそれぞれに備えた車たち、それに輪をかけて変人ぽいお大尽のオーナーが、いかに手塩にかけて育ててきたか苦労話を交え衒いもなく滔々と車の紹介をされます。場馴れしていないオタクのような喋り方の人もいてそれとなしに既視感を覚えて自分を重ね合わせ都合よくこう考えました。ああ、こんなポルシェバカがいる、ワシはその足元にすら及ばん、このひとつ上をゆく陽キャ変態達のあり様こそが「陰キャ」や「チー牛」の究極の成れの果て、まさにワシの行き着く最果ての境地に違いなかろう、と。退屈しない静かで理想的な洞窟をみつけ、自己の原理にのみ従い、自己満足のみを求めることが許される世界、そこで何かに心血を注ぐ、他人の評価ごときに気を遣わずに。ワシもあと一歩で向こう側(陽キャ側)にいけるのではなかろうか・・・などと妄想。まあ端的に言うと、明らかに病状を深刻化させたわけですけれど。
文脈上、くれぐれも”バカ”や”気狂い””変態”はロマンを持つ原理主義者への究極の褒め言葉であることは、良識と高い洞察力のある皆々様には自明のことでしょう。例示するまでもありませんが、釣りキチ三平のキチは釣りキチガイで、他者が言えば尊称、褒め言葉で、一つのことに集中するという意味合いに過ぎません。キチガイを自称する場合には原理主義者やマニアの自嘲、過集中クセの照れ隠しのニュアンスとなります。マニアというギリシア語もまたそもそもが「狂気」の意味で、オブラートに包んだつもりで語源も知らぬまま無意識に使うのはどうかと思います。くれぐれも本当のバカに直接バカと言うほど私はバカではありません。本当の気狂いに対しても気狂いとは言いません。ということを明示したうえで、”頭のおかしいオマエラ”いつもお読みいただきありがとうございます。
コメント
ポルシェ911のオーナーさんでしたか!!
やっぱり凄いなぁ・・・車にあまり興味のない私でも超憧れの車ですよね。
夢のような車に乗れる憧れと、ご指摘のそこまで「バカ」になれる憧れ。
住んでいる世界が違うような・・・これからはくだらないコメントは控えます。
いつもコメントありがとうございます。
車が唯一の楽しみでして、どうぞお許しください。。
実は日記を書いたのが4月1日です!ということです。
これからも今まで通り、コメントをいただけると幸甚です。