無人島に生きる十六人(須川邦彦著)を読んでいて、時化を鎮めるために油を流すという一節があった。海に油を流すというとネガティブな連想するが、油を流すのはおまじないでもなんでもなく物理学的背景、マランゴニ効果、つまり表面張力が不均一になるとそれによって物質が移動するため、結果的に水面を平らにする応力が生じ、それによって波が鎮まる。油は多すぎても効果がなくスプーン一杯で良い。
海の静かな有り様を「油を流したよう」と表現する。科学背景抜きに古から海の人の経験知として共有された。英語表現にもpour oil on troubled waters があって、落ち着かせるの意味になる。古今東西の船員に由来するだろう。
例文 My husband’s always arguing with my father, and I’m the one who has to pour oil on troubled waters.(https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/pour-oil-on-troubled-waters)
小さな波面を落ち着かせることはマランゴニ効果で物理的に確実だが、時化まで抑えることができるかは議論の余地がある。小さなきっかけが大きな波に繋がると考えるとその元を抑えることができれば波及効果をも小さくできる可能性はある。
津波被害が予想されるとき、海上にあらかじめ設置しておいた小さな油のカプセルを遠隔で破裂させて取り急ぎ油膜を作ってはどうか、などと妄想。
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