「プロロジス、岡山市に3.5万平方メートル物流施設。中四国エリアをカバー 」2024_04_23 日本海事新聞見出しから。
先日クロネコヤマトの羽田物流センター(クロノゲート)に行ってから物流施設に興味を持って調べています。単なる倉庫ではなく、修理・組み立て・加工・洗浄・印刷・3Dプリントなど様々なサービスをクロノゲートでやっていることに驚きました。従来の倉庫と物流施設はだいぶ違うゾ、と。
物流施設は倉庫だけではない
日本各地に機械化された物流拠点施設が次々と建っている。まず、物流施設は単なる倉庫ではない。単なる在庫ストックだけではなく、物流の中継地(トランスファー)、工場に近い加工設備を伴うもの、機械の組み立てや修理、通販の決済やカスタマーサービスを行う機能を内包する拠点まである。クロネコみたいに自社で抱える物流施設とはべつに、マルチテナント(築地の市場みたいにいろんな魚屋卸が利用できるような、商業施設みたいな)でやっている物流施設もある。
物流施設が増えた経緯
物流施設が雨後のタケノコみたいに建っている背景について。需要があるからというのはもちろん。つまり①ECの活況、そして②道路の整備がすすんでアクセスの良い場所が増えたこと、③マルチテナント型物流施設という複数社が同時に入るかたち、④マネジメントシステム(IoT活用)や、自動化・ロボット化など人手不足に対応する進んだ施設、⑤倉庫や拠点を必要とする会社が物流ハブを各地に抱えていたのを借りれば解決できるようになること。
物流施設会社に外注でき、高性能な物流施設を初期投資せずに使えること(③④)。余計な人や資本をつかわないから資本効率をあげられる。
新型物流施設の国内先駆けは外資、プロロジスとGLP。
冒頭のプロロジス社は、カリフォルニア州サンフランシスコに本社、物流施設の投資開発運営している物流プロバイダーの先駆け。物流プロバイダーのGLP(シンガポール)と双璧をなす大手の物流会社。プロロジスは投資法人部門と物流施設部門が同じロゴ、その他の会社は不動産投資法人部門とそれぞれがもつ物流施設のブランドロゴを展開している。下にロゴを載せた。
2000年代初頭、外資系不動産ディベロッパーにより国内初の高機能大型物流不動産が建設されてから物流倉庫の置き換えが始まった。大規模でマルチテナントで高機能(ロボット化自動化)。より効率的な施設を黒船に持ち込まれたのが発端で、日本の会社も追いかけている様子。マイナス金利も新規投資に向かいやすかった要因。
物流施設の開設資金はリートで集めている
あと、気になったのが物流施設開発を行う持株会社がREIT(不動産投資信託)として上場している点。リートは間接的に不動産オーナーとなり(株を買って、部分的に会社のオーナーになることと同じ)不動産運用のプロによる運用利回りを配当される。物流施設の不動産賃料や不動産売買損益をリートが受け取って、リートから投資者に配当される。倉庫・物流施設業は初期投資が莫大であっても利益を上げやすいからリートで公募するのは合理的と考える。初期投資が大きい倉庫・物流施設部門を外注できるのは製造業や物流会社(運輸会社)にとっても負担軽減になる。全国の物流倉庫を探すマッチングサイトもあるが、各物流倉庫会社がコンサル部門を設けて営業をしている(各社HPに部門がある)。インフラを作るのはシンドイが、契約企業が一旦使い始めると長期に使うことになるから先が読みやすいストック型ビジネスに分類しうる。
物流施設が人気(?)な理由
ものを作る会社は、物流と倉庫を抱えずに、マルチテナントの物流施設専業に任せたほうが負担を軽減できる。割り切って借りるだけで資本を持たなくてよく、人材も省ける。従来の倉庫会社(三井倉庫 澁澤倉庫など)と何が違うのだろうと考えたのだが在庫ストックの役割が主だったこととの違い。結局は集約と分業による効率化。要するに外注。機械化や自動化によるところが大きい。また、物流施設に工程作業機能を付加することもでき、例えば修理施設を物流施設に設ければ、修理工場への往復が省ける。工場を兼ねるような物流施設もある。
以下各社のロゴを羅列します。
三菱地所がやっているロジクロス(Logicross)社
名古屋、相模原、座間に施設を持つ。不動産会社と倉庫会社のパターンが多い。開業資金が膨大な物流施設を作るための資金集めを不動産会社が行い、広大な敷地を用地買収し、その後貸し出す部門を不動産会社が行う。https://logicross.jp/
三菱地所は「丸の内の大家」とも呼ばれオフィスビルを保有。
野村不動産のLandport社
https://www.nomura-landport.com/
大和ハウス工業のDPL社
三井不動産の、三井不動産ロジスティックスパーク
ふと思ったのが、三井倉庫の子会社の三井倉庫ロジスティクスもある。三井不動産ロジスティックスパークとの関係は?
三井銀行系の倉庫部が分離して明治42年三井倉庫。
一方三井不動産は三井合名会社不動産課からの流れ。三井家の土地建物、不動産管理部門から始まっている。
三井銀行下部組織の三井倉庫、三井家の不動産管理部門からの三井不動産。GHQの財閥解体とも関係しているのか表向きの資本関係は無い。
東京建物のT-LOGI
T-LOGI千葉北は佐川グループ拠点として開業、T-LOGI福岡アイランドシティは延床面積九州最大、2024.3竣工。テナント企業として、司企業株式会社(本社:愛知県豊田市)、アサヒロジ株式会社(本社:東京都墨田区)、株式会社ナカノ商会(本社:東京都江戸川区)、株式会社ライフサポート・エガワ(本社:東京都足立区)(順不同)の入居が決定。マルチテナント。一つの会社が専有する場合とマルチテナントでやる場合とがある。
CRE(シーアールイー)が運営するLogisquare
CREはアラビア太郎、山下太郎の孫、山下修平が2009に設立。幸洋建設(コマーシャルアールイー)の買収によって引き継いでいる。
住友商事の物流施設、SOSiLA(ソシラ)
2006年の茜浜物流センターを皮切りに、2015年ぐらいから本腰を入れている。
三菱商事グループのMCUD Logistics(MCLOGI)
三菱商事の子会社で国内の菱光ロジスティクスと、三菱商事のロジスティクス部門および国際部門の「McTI」が合併。合併後は商社系物流会社最大となった。三菱地所系ロジクロスとは別。
東急不動産のLOGI’Q(ロジック)
日鉄興和不動産のロジフロント
日鉄興和不動産は非上場で日本製鉄が45%株主。興銀グループ(現在のみずほFG)の流れ。都心のデベロッパー興和不動産と、旧八幡製鉄所跡地の開発などを行う新日鉄都市開発が合併、最終的に日鉄興和不動産となる。ロジフロントは東京大阪の都市を中心に倉庫を持つ。
日本GLPのアルファリンク(GLP本社はシンガポール)
相模原、流山、茨木、尼崎に施設を有する。
プロロジス(PROLOGIS)のプロロジスパーク
他社のHPとの違いを述べると、他社は最初に不要な動画が流れ、いかに社会問題に取り組んでいるか、地球環境に優しいとかどうたらこうたら、イメージアップを企図した仕掛けを見させられる。ワシからすれば不要な講釈はハリボテ作業に見える。そこへくるとプロロジスは良い!「物流施設をお探しですか」がトップ画面。おお、待っとったでこれ。実務的で素晴らしい。いきなり目的にたどり着く感じが好きです。
国内に112棟!!!全社ホームページ見たけれどここは洗練されている。私は日本人だからできるだけ日本の会社を贔屓にしたいが。
まとめ
物流会社・製造会社、それらが自前で物流施設を抱えなくてすむことによって資本効率をあげることができ、初期費用が膨大な物流施設を建てる費用や用地売買の手間を省くことが出来ます。拠点をあちこち一社が抱えるより特に中小の会社などにとっては物流施設を借りることはとても効率的な解決法になりえます。
物流会社(トラックとか)と物流施設会社(建物)が分業していること、物流部門を持たない物流施設会社が成立しうることを知りました。物流施設会社は遊休地を募集し、リートでお金を公募し、倉庫を建てて棚子を募集するストック型ビジネスモデル。物流施設会社は空いているスペースを不動産会社経由で募集をかけ、他社に割当て、マルチテナント化をはかっています。
物流施設に加工修理決済機能など本社や工場でやっていた機能の一部を物流施設へ移管し、顧客との物の行き来時間を短縮しサービス向上につなげたりが実際に行われています。従来の保管型倉庫とはまるで違う利用の仕方で物流施設を活用する流れが一斉に進んでいる印象です。製造会社・物流会社は地域ごとのハブを数多い物流施設の選択肢の中から自由に選べ、物流施設側はまるで不動産屋で借り主の募集をかけるように公募しています。倉庫というと秘密で閉じられたイメージですが、今の物流施設は自由に開かれているような感じがします。もちろんセキュリティはきちんとしているはずです。ぜひご利用になってみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。千葉は大雨です。どうぞ良い週末をお過ごしください。
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