情報とコミュニケーション

読書。P・F・ドラッカーの以下の指摘。「正確に話せばわかる」と思っているのは話す側だけってこと。(すでに起こった未来 p207 第十章 情報とコミュニケーション)

我々は上から下へのコミュニケーションを試みてきた。しかし、それではいかに熱心にかつ賢く行なおうとしても成功するはずがない。なぜなら、コミュニケーションの送り手が、コミュニケーションを行なうという前提に立っているからである。しかし、コミュニケーションとは、その受け手の行為なのである

どゆこと?

1)コミュニケーションは知覚、情報は論理。

情報は情が入らないことが前提。「情報」という熟語に情という字がはいっているが情(emotion)がないほうが、例えば数字だけのデータとか数式だけの情報の方が良い。加工された二次情報ではなく、一次ソースの方が良い。二次情報の基盤になる情緒・価値観・期待・知覚、これら個別の臆見から離れ、客観的であればあるほど信頼できる。個別の知覚は共通ではない。ある人が熱いと言っても他の人はぬるいというように。

2)良い情報は、個別限定的データ。だが、逆にコミュニケーションにおいて知覚されるのは全体像。

3)情報の伝達はコミュニケーションを前提とする。

4)コミュニケーションは定性的、すなわち白か黒かでいう。定量的ではなく確率推論的でもない。「何%でシロとかでなく、単にシロ」。

5)ここがミソで絶望的なことだが、コミュニケーションは情報の細かい内容(数字)に依拠せず成立する。

6)コミュニケーションは経験の共有、経験とは知覚である。コミュニケーションに必要なものは情報ではない。(ex.近所のおばさん同士の悪口みたいなもの)

7)コミュニケーションは受け手の行為。

8)動機づけ、理解は、知覚まずありき。

9)受け手の知覚に根ざすものでなければ通じない。

10)伝わったところでこちらの意図とは別の受け取られ方をしうる。知覚は共通基盤ではない。


マスゴミがやっていること、厳密で正確な情報提供ではなく、嫌悪感の提供。好感の提供。情報は適当であればあるほど良い。「ざっくりいうと」に込められた悪意。白か黒かでいうときに、どの程度シロで、どの程度クロなのかは受けてに委ね、ざっくりいうことでの誘導性に無自覚であるか、または意図的である。

宇宙人・UFOの情報番組、怖いという印象操作。事実など適当でよい。おぼろげな写真に基づいて拡大的解釈で恐怖を煽る。写真の出どころなどどうでも良い。トランプ怖い、県知事怖い、保守怖い、減税怖い、印象操作。それらが過剰な音響と絵で強調され芸術が多用(濫用)される。

中東の宗教指導者がやっていることもこれ。お互いに攻めてくるという恐怖感を信者に植え付けて戦わせる。そこには教義の正確な解釈などなく、むしろ不要で、適当であればあるほど、情動(喜怒哀楽)や知覚(温度、痛覚、触覚)に訴えるほどコミュニケーションが成り立つ。正確性を求めて過剰に教義を盛り込めば”正義”の内容が揺らぎ、情報伝達力を削ぐ。

難しい説明よりも情感的に納得できる同情的な相手の言葉でする説明のほうが好まれる。説明する側としてはインチキ臭くても説明を受ける側の情に寄り添った説明のほうが伝わり、後腐れもない。特に手の施しようがないとき。知覚は論理ではない。

「話せばわかる」と思っているのは話す側だけ。狂信者を理屈で説得することはできない。

人は見たいものしか見ない。知覚したいことしか知覚しない。理屈とか実際の仕組みとか余計な「正確な」ことを言わないで、極論すれば優しい声をかけるとか、はっ倒すとか、撫でるとか、そうして伝わった知覚からしかその人に伝えることはできないし、動機や意識の変容はおこらない、私は戸塚ヨットスクール支持者ではないが、例えが悪いがまあ近い。犬の躾は論理ではなく知覚の経験に基づく。

わかりやすさと思っていることは、意図的に「不正確」で「知覚に訴える」ように設計されたもの。面白い授業は情に訴え、意外に知識が何も残らない(その割に雑談が頭に残る)。それが、本を読むきっかけにはなりうる、そこまで含めて良い教師なのかもしれない。大学の授業が全て眠かったのは(受け手、私の問題だが)、コミュニケーションの本質に無自覚で正確さだけを追求するからだ(私のせいではない)。

知覚(それによって起こる情動)のみを伝え、情報を正確に伝えない、これをコミュニケーションというのであれば、「マス・コミュニケーション」とは「大衆・扇情」である(ゲッペルスとおんなじじゃ)。大衆の情動、期待感を喚起するための悪意を弄して作られているテレビ、新聞というものに、次第に懐疑の目を持ち、マス・コミュニケーションに対し斜に構えた人が増える。知覚にアクセスしやすい芸術とマスコミの悪意とが結ぶ結果、芸術にさえも猜疑の目が向けられる。

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