王八蛋と暗笨蛋は、アンポンタンの語源かもしれない

台湾の言葉を勉強中です。店で料理をオーダー出来るぐらいにはなりたいです。

王八蛋

スラングの話です。

さて、ビビアン・スーさんが出ている台湾のテレビ番組を見ていた。(康熙來了完整版(第五季第58集) 掌門人-徐若瑄 https://youtu.be/aNYAELbpXjk?si=mKIE1YC30MUCdU_6 )

上のようなキャプションが出てきた。王八蛋はピータンみたいな料理名ではない。「王八蛋(ワンパタン)」は「馬鹿野郎」の意味。日本のワンパターン(和製英語)が台湾人の耳に「王八蛋」(馬鹿野郎)と聞こえるらしく、台湾人に対してうっかり言えない。なぜ王八蛋が馬鹿野郎の意味になるのか。

王八ワンパ はスッポンである

本来長江流域の南方方言でスッポンを「王八」ワンパといった。江蘇方言で「王八湯」はスッポンスープ(王八湯もワンバータンと読め、音が近い)。スッポンは、首を引っ込める姿や「泥臭さ」から「卑劣」「臆病」のイメージに結びついた。南方では食材の意味と、侮蔑の意味とふたつ、北方ではスッポンが存在しないので王八は純粋に侮辱語となった。八つの徳を忘れるダメ人間という意味で「忘八」ワンパーという説もある。ともかくスッポンは罵倒語になる。

XX+蛋 語尾にタマゴがなぜつくのかよくわからない

王八蛋。なんで(タマゴの意味)が接尾するのか、侮辱語の語尾でほかにも「蛋 タン (タマゴ)」が使用され、例えば笨蛋(bèndàn 愚かな)、壞蛋(huàidàn 悪党!)、蠢蛋(chǔndàn 蠢くが愚かで鈍い、のろま!)がある。タマゴに悪い人の意味をこめるというのがしっくり来ない。推測だが、未熟な、生物学的に未発生の、というニュアンスか。王八蛋は、文字通りならスッポンのタマゴになる。「スッポンの卵!」と言われても全く怒る気に成れない。

日本語のタンは、可愛いものにつける

水森亜土という不思議キャラのおばさんがいた。「亜土タン」と自称していた(子供の頃かわいそうな人だと思っていたのだが。。)

一般にかわいいタレントをタンと呼ぶ場合がある(しょこたんなど)。キャラクターでノンタンという猫もいた。幼児語で「チャ」が発音できない間、オトウタン(チャン)オカアタン(チャン)と不完全な発音をするその応用と考えられる。

2chやオタク界隈ではタンをタソと表記、例えば、「ショコタソに萌え萌え」と、いい大人のくせに幼児語のタンを使うことによって、敢えてキモくする効果を狙う。もちろん対象者への侮蔑の意味はなく、発話者自体(オタク)がもともと気持ち悪いと社会から蔑まれている存在なのでいっそ開き直ってもっとキモくなってみせようという、一つの自虐。

スカポンタン、アンポンタンなど日本語でも侮蔑語にタンがつくものが少数ながらある。スカポンタンはスカタンとアンポンタンのかばん語。アンポンタンについては上記の「笨蛋」説(https://ameblo.jp/chandan-neko/entry-12386645197.html 日本語の語源 〜目から鱗の語源ブログ〜)や、王八蛋説もある。日本統治時代に日本語に移入し定着したピジン語説(兵隊シナ語説)がある(中国 歴史の残像「協和語」研究=辻康吾)

日本での亀とスッポンの扱い

さて堀ちえみのスチュワーデス物語で「私はドジでのろまな亀よ!」というセリフがあったが、日本では亀は「歩みがのろい」と言うだけで、罵り言葉にはあまり使わない。鶴亀はむしろ縁起が良い動物。スッポンも元気が出る食べ物。経験的にだが、亀とスッポンは微妙に別に扱われており、スッポンが下に見られ気味悪い特別な亀で食べる人は食べる、というポジションと思っていた。スッポン(ウィキペディアの)を読むと意外と言うかやはりというか、次のように地域や時代によっては日本でもスッポンに対して悪い意味づけがあった。

『北越奇談』にあるスッポンにまつわる怪談「亀六泥亀の怪を見て僧となる」(葛飾北斎画)かつて日本ではキツネやタヌキといった動物と同様、土地によってはスッポンも妖怪視され、人間の子供をさらったり血を吸ったりするといわれていた。また「食いついて離さない」と喩えられたことから大変執念深い性格で、あまりスッポン料理を食べ過ぎると幽霊になって祟るともいわれた。江戸時代には、ある大繁盛していたスッポン屋の主人が寝床で無数のスッポンの霊に苦しめられる話が北陸地方の奇談集『北越奇談』にある他、名古屋でいつもスッポンを食べていた男がこの霊に取り憑かれ、顔や手足がスッポンのような形になってしまったという話が残されている。また古書『怪談旅之曙』によれば、ある百姓がスッポンを売って生活していたところ、執念深いスッポンの怨霊が身長十丈の妖怪・高入道となって現れ、そればかりかその百姓のもとに生まれた子は、スッポンのように上唇が尖り、目が丸く鋭く、手足に水かきがあり、ミミズを常食したという。近代でも、一度噛みつかれると「雷が鳴っても離さない」と言い伝えられてきた。スッポン食に関係する諺(ことわざ)として、「鼈人を食わんとして却って人に食わる」がある。物事をしつこく探求する者を「スッポンの何某」と呼ぶこともあった。前近代の中国人は、漁業で生活する異民族を「魚鼈(ぎょべつ)にまみれる」と表現した。また、二つの物事を比較する際、天と地ほども差があることを表す慣用句として「月と鼈」という言い回しがある。ウィキペディア スッポン

まとめ

王八ワンパはスッポン。

王八蛋ワンパタンはスッポンのタマゴ。

スッポンはあっちでは悪いイメージを持たれている動物、それを人に当てこすると侮辱になる。

日本でもかつてスッポンに悪いイメージを持った時期/地域があった。今も多少ある。

タマゴ(蛋 タン)が侮蔑語に付加される意味はわからない。

日本だとタンは可愛いものに対してチャンの代わりにつける。大人がやるとキモいが、オタクはキモさを狙って敢えてそうする。

王八蛋はワンパタンと発音し、日本語のワンパターンと発音がよく似ており台湾人に誤解される。

アンポンタンの語源は不明だが、「暗笨蛋」「王八蛋」に由来するかもしれない。


台湾語のスラングを勉強してみたくなりました。お読みいただきありがとうございます。

台湾淡水でみた10連換気扇。

淡水の大学構内の池にいた亀タソ

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