収容所「ラーゲリ」とラガービールの「ラガー」は語源が同じ

KGBやゾルゲ事件を調べていたらモスクワで粛清された日本人の記事に出くわした。

国崎定洞という人物。日本の衛生学者・共産主義者・社会主義者。社会衛生学の創始者。東大医学部卒業後軍医等を経て1926年、文部省から社会衛生学研究を目的としてドイツに派遣中、1928年7月にドイツ共産党入党、1929年にベルリンに滞在している日本人とドイツ共産党日本語部を結成、しかしソビエト連邦移住後にスターリンによりスパイ容疑で他の多数の日本人とともに処刑された。

彼ら日本人が送られた収容所をロシア語で「ラーゲリ」という。

ロシア語のлагерьラーゲリの語源は

Later borrowing from German Lager (“camp”). ドイツ語の借用

意味は

camp, camp-out
camp, party, faction
labour camp, prison camp

とある。

labour camp, prison camp

で、ラーゲリと日本語で言った時、強制労働収容所のことを指すようだ。

一方ラーゲリの借用元、ドイツ語のLagerの説明を見ると、

Noun
Lager n (genitive Lagers, plural Lager or Läger)

a place where one sleeps, such as a bed or a spot in a barn, etc.
a lair of an animal (but not usually underground, for which Bau)
a camp (accomodation of tents or quickly built houses)
(obsolete) an army, especially but not exclusively when encamped
(figuratively) a camp, party (group of people sharing some interest or opinion)
a stock; storage; depot; repository (building or room used for keeping goods)
auf Lager ― in stock
(geology, mining) a measure (of some resource)
(mechanics) a bearing
Short for Lagerbier: lager (beer of low fermentation)

即席のキャンプ、貯蔵庫などの意味がつづいたあと、一番最後に、ラガービールの略Short for Lagerbierとある。しかし強制労働させる収容所の意はない。

ラガービールは貯蔵ビールの意味。バイエルン地方のビールで硬水で活性をもつエールビールの酵素を軟水のバイエルンでは利用できない。低温で活動する酵母を使用し秋の終わりにビール樽を洞窟の中で氷と共に貯蔵し、翌年の春に取り出す貯蔵(ドイツ語で「ラガー」Lager、動詞形ならlagern)されたビールをラガービールと呼んだ。ラガービールとは逐語的に単に貯蔵ビール

ソ連で粛清された日本人の多くは沖縄から仕事を求めてアメリカ西海岸に渡り、そこでの人種差別や低賃金労働を体験して社会主義・共産主義に近づいたという。1929年恐慌により失業者が激増、米国共産党日本人部に所属して、中国人、朝鮮人、フィリピン人などとともに労働運動に加わった。ソ連の下部組織である米国共産党が弾圧され彼らは国外追放となる。彼らはソ連に亡命し日本語教師などになった。しかし、アメリカからソ連に亡命した日本人全員が、今度はスターリンによって「日本からのスパイ」として逮捕、銃殺・強制収容所「ラーゲリ」おくりとなった。その詳細が明るみになったのはソ連崩壊後である。

毛沢東の大躍進(飢餓により1,500万〜5,500万人が死亡)にしろ、スターリンのウクライナにおけるホロドモール(ウクライナ人が400万人から1,450万人死亡)にしろ、カティンの森でのポーランド人22000人の大虐殺にしろ、共産主義の独裁者が人殺しのクソ野郎なのはお家芸である。

映画 スターリンの葬送狂騒曲

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