台湾パイナップル日記6 亜熱帯植物の耐寒性

台湾パイナポウ様のご近況。部屋でお過ごし頂いています。観葉植物的です。

パイナップルは「草」で、果樹ではないのですが、参考に熱帯植物の文献を読んでみました。

「亜熱帯果樹の生育特性と温帯における栽培の可能性について」京都大学農学部宇都宮直樹さんの論文。ケンユーさんのユーチューブで紹介されていました。

https://core.ac.uk/download/pdf/144566311.pdf

「年平均気温が15~20℃で季節による気温較差のあまりないような条件を好む亜熱帯果樹類」に適した栽培方法を数ヶ月寒い時期のある温帯(日本)で栽培する方法を考察する論文。亜熱帯の”果樹”を概観する論文なので草であるパイナップルの話ではないです。

花をつけるためには低温が必要なレイシ(20度以下)など低温要求性がある品種もあります。即ちずっと暑いと花をつけない、少し寒くなると花をつける。

腋芽タイプは新しい梢が育つ時に花をつけるけれど、もっと高温になって梢の成長が盛んなときは花芽分化が逆に困難になります。適温で花実がつく。

「亜熱帯果樹ではその花芽分化に低温を必要としたり,あるいは低温によって花芽形成が促進されることが示されている.温帯では冬季から春季にかけて十分な低温が得られ,頂生花芽タイプの亜熱帯果樹にとってはむしろ花芽分化に好適な温度条件が得られると思われる.」

受粉についてはパイナップルが受粉を必要としないので割愛します。パイナップルは種無し。

パイナップルの実について
1コに見えるパイナップルの実は、たくさんの果実が集まったもので「集合果」と呼ばれます。1コのパイナップルの実はおよそ100~200の小さな花の集合体です。

私たちが普段食べている黄色い果肉の部分は、花の土台となっている「花床」と呼ばれる部分が肥大したものです。フルーツとして栽培されているものはいわゆる種なしです。パイナップルは、同じ品種どうしではタネを作る能力がありません(自家不和合成)。受粉しなくても果実が大きくなって甘く熟します。もし、他の品種をもってきて受粉したら、タネはできます。タネは茶色い小粒で、ちょうど皮と果肉の間にできます。

パイナップルとは|ヤサシイエンゲイ

続いて、論文中、「果実の生長と成熟の条件」について、あまり高温だと成長ステージが早くなる一方で実が大きくならない、低温だと果実の成熟が遅れるものの種類によっては品質が良くなるのだそうです。パイナップルにはどちらが適してるかな。

パパイヤやグアバの果実は成熟時に軽い低温ストレスを受けると品質が良くなる。成熟時に温度が低下し,それが軽いストレスとなるような場合は果実の品質が向上・・

常に適温の温室育ちが必ずしも良いとは限らないってことですね。季節を感じてるかのよう。

(Q 秋のパイナップルは夏のパイナップルより美味しいと聞いたことがあります。品種の違いだと思っていたけれど、果実の成熟速度が気温のやや低い秋のほうが遅く、品質がよくなるのかな?)

続いて、「亜熱帯果樹の耐寒性」について。もっと寒くなると熱帯果樹はどう変化するか。

植物は気温が低下するようになるとその生長を停止して木化させたり体内の代謝を変化させて糖、脂肪酸、アミノ酸などをより多く蓄積して、更に気温が低下しても生存できるようにする機能を持っており、このようにして耐寒性を増大させてゆく現象をハードニングという。

果樹においては未熟な組織(樹齢が若いもの)ほど耐寒性が低い。

(ちなみにハードニングはIT用語では「要塞化」つまり脆弱性をなくしセキュリティを強化する意味だそうです)

根から水を吸い上げる力が弱い冬に風の当て過ぎは乾燥のもとになる。土壌は乾燥気味が良い。

冷たくて乾いた季節風は葉に機械的な障害を与えるだけでなく葉温を低下させその生理的機能を低下させる。また亜熱帯果樹では冬季になっても日中は葉で蒸散が行なわれているが、地温の低下などにより吸収能力が低下しているため葉には水分ストレスが与えられ、離層が形成されやすくなっている。このような状態の葉に季節風が当たると葉は容易に落葉し、異常落葉の原因となる。

土壌乾燥によって植物体に適度なストレスが与えられるとその耐寒性が増加することが知られている。

秋から冬にかけて、水やりを減らすようにとはよく言われることですが、果樹によっては土壌乾燥により「耐寒性が増加」するのですね!適度な低温ストレスと土壌乾燥が、耐寒性増加のコツのようです。

ハードニングという、植物自体が寒冷に順応して耐性を獲得する変化が面白いですが、ただし急に冷えると耐性は獲得できないようで、ジワジワと寒さに慣らしていくのがコツのようです。

<参考にしたサイト>

AgriKnowledgeシステム
鉢花のハードニング
おはようございます。 寒さが一段と厳しくなってきて、ハウスの暖房機も 忙しくなってきました。 下の写真が暖房機です。 出荷が近くなってくると、 暖房の温度を徐々に下げて、あらかじめ出荷後の環境に慣れさせます。 これを「ハードニング」といいま...
コムギのハードニング反応性遺伝子 | 農研機構
農研機構は食料・農業・農村に関する研究開発を行う機関です。ハードニング誘導環境下において特異的に発現する遺伝子群を、コムギより単離し、その構造を明らかにし、ハードニング誘導に関する機能の推定を行った。ハードニング反応性遺伝子の一つは、葉緑体...
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcs1927/71/2/71_2_220/_pdf/-char/ja
園芸知識:冬越し

水やりの間隔を広げるのは、土を乾き気味にするためである。しおれない程度に土が乾いていると、植物内の樹液濃度が高まり、耐寒性が強くなる。(体内水分が濃縮されると凍結しにくくなるため。)

植物は面白いですね。「樹液濃度が高まり・・・」

以下は蛇足です。根拠のない私の妄想です。

人間の血液も冬に濃くなるのだろうか?冬になると末梢血管が収縮するため中心血圧が上がると習いました。同じ生物として同じように耐寒性を高めるために合目的的に血が濃くなり高血圧になるのでは?(そんなの妄想だ(笑)人間は恒温動物だし。)歳をとると動脈にカルシウムが付いて動脈硬化します。植物の木化みたいに(また、勝手な連想)。

誤解を招かないように明示しますが、冬に脳出血が多く、血圧は積極的に下げたほうが良いのは間違いないことです。

お読みいただきありがとうございます。

パイナップル日記の続きは↓こちらです。

コメント

  1. やっぱりストレスが重要なんですね~。
    トマトとかでもストレスを与えた方が甘くなるって言いますからね~。

    植物:ストレスによって樹液濃度が高まる=人間:ストレスによって血圧が上がる。
    植物も人間も同じ生き物なんですね~(笑)

  2. yopioid より:

    いつも書き込みありがとうございます。
    トマトそうなんですね。ストレスで甘くなる、、、、人間の場合ストレスでコルチゾールが分泌して糖尿病悪化の原因になるようですが、んーあんまりこじつけるのはやめにしますね。
    私の妄想と言われかねないので。。

  3. いや、妄想じゃないんじゃないと思いますよ~(^.^)

  4. yopioid より:

    フォローをありがとうございます。^^;

  5. yopioid より:

    (^-^)ありがとうございます♪

  6. いえいえ、本当にそう思ったんですよ~。
    だって「天人合一」ですから(^_-)-☆

  7. yopioid より:

    天人合一、今調べました。実はラーメンの天下一品に見えました。

  8. 天下一品、まだ行ったことないんですよ~(>_<)
    今年の目標にします!!(笑)

  9. yopioid より:

    コッテリしてますよ。大学生向きかも。

  10. 好きです、そういうの(笑)

  11. yopioid より:
  12. ありがとうございます(*^^)v