トラフとは水を湛える樋であり、牛に餌をやる容器でもある。

要点 トラフ形照明装置のトラフ、水を湛える樋から来ている。

概要 直管形蛍光灯の細長い照明装置をトラフ形と呼ぶ、その理由を調べていたら、牛の水やり用樋や家屋の雨樋のことも「トラフ」ということがわかった。工業施設で粉体を送る樋状コンベヤもトラフ形と呼ばれるものがある。南海トラフのイメージが私の中で過ぎていた。


この形をトラフ形となぜ呼ぶのか。

トラフといえば、南海トラフなどを思いつく。トラフは海溝ではなく海盆である。他に薬理学で血中濃度Maxをピーク値、血中濃度が下がった盆状の低いところをトラフ値と表現する。私のトラフの言葉のイメージはしたにえぐれている「溝」または「谷」あるいは「盆」だ。天井にぶら下がる直方体、蛍光灯直管形の形態にあわせて作られた筐体、どうにも形態的に溝や盆に見えない、なぜそれをトラフ形と言うのか?

NEC ホタルクス HotaluX MMK2101/10-N1 ”トラフ形”

トラフの語源を調べてみる。海溝や海盆の言及がなく、水を入れる容器の意味が強い。まず語源、

From Middle English trogh, from Old English troh, trog (“a trough, tub, basin, vessel for containing liquids or other materials”), from Proto-West Germanic *trog, from Proto-Germanic *trugą, *trugaz, from Proto-Indo-European *drukós, enlargement of *dóru (“tree”).

See also West Frisian trôch, Dutch trog, German Trog, Danish trug, Swedish tråg; also Middle Irish drochta (“wooden basin”), Old Armenian տարգալ (targal, “ladle, spoon”). More at tree.

語源は「トラフ、たらい、液体または他の材料を入れるための容器」

現在使われる意味はどうか。やはり容器の意味が中心のようだ。

トラフの語義

  1. A long, narrow container, open on top, for feeding or watering animals. 
  2. Any similarly shaped container. (Australia, New Zealand) A rectangular container used for washing or rinsing clothes.
  3. A short, narrow canal designed to hold water until it drains or evaporates.
  4. (colloquial) An undivided metal urinal (plumbing fixture)
  5. (Canada) A gutter under the eaves of a building; an eaves trough.
  6. (agriculture, Australia, New Zealand) A channel for conveying water or other farm liquids (such as milk) from place to place by gravity; any ‘U’ or ‘V’ cross-sectioned irrigation channel. 1と6これだ。樋だ、樋の形だ。四角で長い。雨樋とか。神田上水の木樋を思い出した。U字溝とか。
  7. A long, narrow depression between waves or ridges; the low portion of a wave cycle.  例文1)The buoy bobbed between the crests and troughs of the waves moving across the bay. ブイは湾を通過する時、波の山と谷の間で浮き沈みした。例文2)The neurologist pointed to a troubling trough in the pattern of his brain-waves. 脳波のトラフにヤバい所見があった。
  8. (economy) low turning point or a local minimum of a business cycle
  9. (meteorology) A linear atmospheric depression associated with a weather front.気象前線に伴う直線的な大気の落ち込み。
By Andreas Cappell from Erlangen, Germany – Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=379191 

コレがトラフだ。牛とセット。

トラフ形照明装置、蛍光灯を外して天地をひっくり返すと、明らかに樋形である。

牛を添えると、まさにこれぞトラフ。牛の餌やり容器に見えます。わざわざこのために牛のフィギュアを買ってきました。そう、ワシはアホなおっちゃんやけん。

ということで、名残惜しい蛍光灯装置と遊んでみました。

歌川広重 – 国立国会図書館デジタルコレクション 『東都名所』に描かれた神田上水懸樋=神田上水トラフ

電灯のトラフ形の語源と樋との関係の記載を私には見つけることができなかった。雨樋の会社で「株式会社トラフ」を見つけた。また、粉体工学会HPの粉体用語の定義「フィーダー・コンベヤの U 形・円筒・箱形などのケース(とい 樋)をトラフと呼ぶ。」と、トラフという言葉がしっかり樋の意味で日本語でも使われていたのだった。ワシが知らなんだだけ。

ケンブリッジ英語辞書にもロングマン辞書にもトラフの定義に海溝海盆のことが書いてない。ディクショナリドットコムだと、やっと海洋学用語として出てきた。「6000m」より浅いものを海盆、その形が船の底のように細長い形であれば舟状海盆、長くなければ単に海盆と呼ぶ。6000mより深いものをトレンチ、つまり海溝という。

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/trough  https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/trough 

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トラフ(海盆)<(深さ)6000m<トレンチ(海溝)

色々調べていたら照明器具の「逆富士形」というのもあった。断面積が逆三角形で見事に逆富士になっている。むしろこっちのV字のほうが船底っぽくて海盆(トラフ)っぽいがこちらはトラフ形とは呼ばない。

英語圏でトラフは容器の意味合いが強い、海盆の意味が先に来るのは地震大国日本、おそらくジャーゴンとして入って来たのだろう。

いつもお読み頂きありがとうございます。どうぞ良い週末をお過ごしください。

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