東京會舘にマロンシャンテリーというケーキがあります。系列のパレスホテル東京は「マロンシャンティイ」と呼んで同じようなケーキを売っています。
シャンティイーとはなにかを調べてみたところ、結論を先にいうと生クリーム発祥の地がシャンティイという地名でパリの近くでお城があります。シャンティイ城で腕をふるっていた宮廷料理人ヴァテールが考案したのが我々が日頃食べる「生クリーム」で、クレーム・シャンティイと通称され、後置修飾なので「シャンティイ風クリーム」でしょう。ところでなんで最後のイが大きいのか。どう発音すれば良いのか、日本語のカタカナ表記に無理やり押し込める前のフランス語はどうなのか。
少し脱線します。餃子の王将でチャーハン定食を頼むと「ハン定 一(ハンテイイー)」とコールされます。語尾のイーがそう聞えてしまう王将ヘビーユーザーです。更に脱線しますがハンテイイーが、大学入試前の私には判定Eと聞こえたものでした。
さて、戻ります。シャンティイは、スペルをChantilly、英語読みでシャンテリー。フランス人の読みだと記号は、[ʃɑ̃.ti.ji]。発音を聞くと「ショティ(ィ)、ショテリ」と語尾下げに聞えます。シャンティイーと語尾の「イ」を殊更には強調していません(王将の店員さんの数詞のようにはない)。フランス人でもショティィと読む人もいれば、シャンティイーと読む人もいる。フランス語は北部と南部とで違うことを思い出しました。
フランス語のスペルillのllは日本語のヤ行の子音になり、illをカタカナで書くと「イユ」ですが、実際は北部フランスでは「イ」の後に添えるように弱く短く「イィ」のように発音されるだけ。語尾のイを強調してるように聞えないため、shortlyと空耳するくらい存在感のない語尾の「イ」。逆にスペイン人やフランス南部のオック語発音だと「シャンティイー」と、聞えます。 https://ja.forvo.com/word/chantilly/
フランスの北側と南側では言語と歴史が異なりますが、統一フランスという国民国家成立に伴い北部の言語(パリ方言)で統一し、南仏のオック語やその他の少数言語を抑圧してきた歴史がフランスにはあります。フランス北部方言はフランク人など征服者側の言語(フランク語)などの母音が流入して複雑です。
フランス南部にマルセイユMarseilleがありますが、地元の発音ではマルセイユとユをはっきりいうけれど、フランス北部の発音で読み直すと「マルセイ(ィ)」。フランス南部プロヴァンス地方の料理ラタトゥイユRatatouille、これも北部発音だと「ラタトゥイ(ィ)」。語尾のイユをはっきり言う発音はスペイン人の発音に近い南仏オック語(ラングドック)。
Chantillyをスペイン人が発音すると日本語のシャンティイに近くなります。スペイン語では「y」はイと発音(「and」の意味)し、また「LL」はフランス語と同じくj(ヤユヨの子音)になる。Chantillyが[ʃɑ̃.ti.ji]シャンティユィーと聞こえます。ところが、フランス語(北部パリ方言 標準語)ではjiを小さく「ィ」と発音する。つまり「シャンティ・ィ」。
東京會舘とパレスホテルで供されるマロンシャンティ、仮にもし「マロンシャンティイ」と名付けて出していたら、「この菓子職人はフランス南部出身だろう」と思われ、敢えて反骨精神でフランス北部の菓子を南部読みに置き換えたのではないかと思われるわけですが考案者は日本人だそうです。
<マロンシャンテリー誕生>
https://www.kaikan.co.jp/product/marron.html
日本の洋菓子の祖として知られる、東京會舘初代製菓長 勝目清鷹(1900~1972)がモンブラン(白い山のデザート)を見て、1950年頃、日本人向けにアレンジして発案したと言われています。
シャンティイに似た言葉として、フランス語のシャンテChanterは「歌う」スペルからはカンターレの仲間みたいだ。ヒンドゥー語でシャンティは「平和」、日本語のおシャンティは「おしゃんの派生、おしゃれさん」、既に死語ですが。お読みいただきありがとシャンティ・・・
https://ja.bab.la/%E7%99%BA%E9%9F%B3/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%AA%9E/chantilly
板橋で見つけたシャンティ。インドのヒンドゥー語のシャンティ、平和の意味だろう。
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