国民宿舎 ホテル川湯パーク

一泊二食温泉つき、税込み7000円。必要十分な施設。屈斜路湖と摩周湖の間にある。

川湯温泉の硫黄泉は近傍のアトサヌプリを起源とし、酸性で温泉らしい匂いがする。周囲の温泉施設は全て100%天然源泉掛け流し温泉を使用。温泉の質はずば抜けている。

着くなり貼り紙に気づく。残念なことに「48年間ありがとうございました」と。

川湯温泉は道東の観光名所(摩周湖、屈斜路湖、アトサヌプリ)から何れも近く、観光拠点として立地が最高であるにもかかわらず、どうしたことだろう。周囲の温泉宿も閉じたところが多い。

鮭の大きなフライが美味しかった。壁紙もきれい。タバコは可、掃除が行き届いている。温泉は酸性で刺激が強いが、硫黄の匂いが濃厚でこれぞ温泉。皮膚が弱いので顔が少し赤くなったが翌日からなんだか皮膚の調子がいい。

「国民宿舎は日本国民の健全なレクリエーションと健康の増進を図り、国民の誰もが低廉でしかも快適に利用出来ることを目的として1956年(昭和31年)に制度化された」。職員さんにうかがうと、閉鎖後は国の施設なのでいったん取り壊し更地にする、と。こんなきれいな壁紙、なんてもったいないことを。

青少年自然の家やユースホステル、合宿施設みたいな雰囲気が何ゆえか好きである。公営図書館とか国立大学とか、昔風の機能的な公的施設が好きだ。

一方で営利目的の過剰なサービスや華美な虚飾を行って、よせばいいのにハッピとか来てるおやじとかが手もみしたり、名物女将がいたりするようなヘンテコな旅館を異形だと思う。

翌朝、スタッフ総出で駐車場まで出て、手を振って泊り客を見送っている。これを48年続けてこられたのだろう。数日後終焉を迎えるというのに一生懸命手を振っておられた。それに感動したあまり、出口を間違ってまた駐車場に入ってしまい、ちらっと見るとまだ手を振っていた。ゴメンナサイと頭を下げた。

去りゆく国民宿舎はインバウンドなどという薄ら寒い狂騒とは無縁の、日本国民のための硬派な温泉宿であった。礼儀作法を弁えないどこぞの異国の客は皆無で居心地が良かった。

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