テクタイト

テクタイト関連のニュースがあったので、茨城県自然博物館で撮影したテクタイトさん達とともにご紹介。

テクタイトは隕石がぶつかったときにできるガラス質の宝石

テクタイトは隕石がぶつかったとき、クレーターから飛び散る、宝石にもなる綺麗なガラスです。テクタイトがあればクレーターが必ずあります。新しいクレーターが見つかったニュースです。見つかった場所により、リビアングラス、モルダバイト、インドシナイトなどの名前がありますが全部テクタイトです。

地表のシリコンが気化、吹き飛ばされ、落下しながら固まってテクタイトができる

隕石衝突時、地表のシリコンが気化して吹きとばされ、落下しながらかたまりガラス質のテクタイトができます。テクタイトは見つかっているのだけれどクレーターが見つかっていない事がよくあります。クレーターをみつけることが科学者のテーマとなります。

リビアのテクタイト(リビアングラス)の給源クレーターが北アフリカでみつかった

リビアにはリビアングラスが一定の10km以内に散在し、中心にケビラクレーターがみつかり隕石の衝突由来とされています。ケビラクレーターは最近発見されました。人工衛星によって!

JAXA より転載 リビアングラスがここで作られたかもしれない。
Kebira Crater グーグルマップでも確認できます。https://maps.app.goo.gl/Le5JxBNWAMd8jBwV8

隕石のインパクトでできた平原は、地上からわからなくても、人工衛星から発見されます。クレーターの中央は丘になり、ここには地下の岩石が表層に顔を出しているところなので、地殻の窓と言われるそうです。月のクレーターも月の地質を見るときに利用されます。どんとぶつかった衝撃で地殻が耕されているから。

Wikipedia リビアングラスから

ボヘミア地方のテクタイトであるモルダバイトも隕石の衝撃で撒き散らされた

モルダバイト(Moldavite)はボヘミア(チェコ西部)で見つかる緑色の天然ガラスです。随分離れたドイツのリースクレーターによってもたらされました。隕石が落ちたところの砂や泥が気化して吹き飛ばされ、空中を漂い、ボヘミア地方に落下したのです。

リースクレーターからモルダバイトの見つかる場所が離れている理由は次のようになります。

参考文献

衝突天体(asteroid)の西からの低角進入により・・・・

https://www.aboutmoldavites.com/the-origin-of-moldavites-common-theory/

・・・・モルダバイトの分布は隕石落下地点の東側にかたよります。

https://www.aboutmoldavites.com/the-origin-of-moldavites-common-theory/

チェコのボヘミアングラスとモルダバイト分布域の一致は偶然なのだろうか

チェコはボヘミアングラスが有名ですが、ヴェネツィアからガラス製造技術が伝わったのは13世紀です。ただ、その前から美しい天然ガラスであるテクタイトは転がっていたわけです。そして、もともとチェコは宝石加工が盛んな土地でした。想像をたくましくすると、隕石によってもたらされた天然ガラスと関わりがあったボヘミア地方の人々には、13世紀に始まる人工ガラス製造と加工をうけいれるガラス文化の素地があったのかも。

チェコ共和国、ボヘミアのモルダバイト。wilipedia 
(飛ばされている間に空中で固まったのだそうだけど、落ちた時割れないのかな。。)

チェコの地図です。ボヘミアはチェコ西中部の地方名、モウダウ川が南から北へ流れるあたり。モラヴィア地方はチェコ東部のことです。

ネルトリンゲン~~モルダバイトをチェコまで吹き飛ばした隕石が落ちた街

前後しますが隕石落下地点のネルトリンゲンの街です。ここ(ドイツ)にどんと落ちて、東のチェコにモルダバイトがバラまかれました。スケールでっかい。

次の地形図の真ん中がネルトリンゲン。クレーターそのものが街です。月のクレーターみたいな感じ。

ネルトリンガー リース 周辺のtopography
1500万年前の巨大隕石によるクレーター 直径約25 km(東京から横浜ぐらい) 
堕ちたときは、もともと深さが2000mあった。

テクタイトはガラス質です。ケイ素が急に固まるとガラス質、ゆっくり結晶をつくると水晶になります

テクタイトは天然ガラスであり水晶ではありません。ガラスと水晶との違いは、素材は同じ酸化ケイ素だけれど、結晶を作る暇がない速さで冷えて疎に結合したのがガラス、ゆっくり冷えて結晶をつくりしっかり酸化ケイ素が結合したものが水晶です。縄文時代に矢じりにつかった黒曜石(オブシディアン)もガラスに分類されます。黒曜石は天然ガラスだけれど、隕石とは関係ありません。火山活動によります。

隕石が落ちた場所を探すための手がかり、スエバイトという岩石の特徴

スエバイトは巨大衝突構造の判別指標として用いられる角礫岩で半分溶けかけて固まった、見かけはさざれ石みたいな感じ。これを見つけたらクレーターであった証拠になります。クレーターから吹きとばされたテクタイトは見つかるんだけど、給源クレーターが見つからない、これがすでに述べましたが地学上の課題となっています。クレータークエストの際の同定手段の一つがスエバイトです。

リースクレーターのスエバイト、隕石インパクトの証拠!

インドシナイトの供給源が見つかったかもしれない!

ここからが本題、今回見つかった給源クレーターの話。

ベトナム、タイ、カンボジアなど東南アジア、オーストラリアで発見されるテクタイトのインドシナイト。80万年前に落ちた隕石によるのだけど、クレーターが見つかっていなかった。

インドシナイトもテクタイトの一種で、隕石によってもたらされたことはわかっているのですが、給源クレーターがどこかがわかっていませんでした。

インドシナイトは東南アジアからオーストラリアまで散らばっています。いったいどこにでかい隕石が落ちたのか。この度、ラオス南部の「火山に埋もれた場所」に隕石の落ちたクレーターが隠されていると報告されました。(2020.1.21 米科学アカデミー紀要電子版)

Khorat plateau コーラート台地 水はけの悪い土壌で農業にむかない

Bolaven plateau ボーラウェン高原 

Strewn field: The term strewn field indicates the area where meteorites from a single fall are dispersed. It is also often used for the area containing tektites produced by large meteorite impact.

Muong Nong 大きく不規則形で、溶融温度が低く、縞状構造をもつテクタイト 

late cenozoic 新生代後期

basalts 玄武岩

以上です。オタクな話題で恐縮です。お読みいただきありがとうございました。

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