単語”wallowing”を調べている時にvolvoの語源と同じで「コロコロ回る」だと知りました。
”you saw him wallowing along in the water like a porpoise”(1984)水の中でもがく(転がるからの意訳)
ラテン語のVolvoは語源的にwallowingと兄弟分の言葉と知りました。意味はVolvo ‘I roll’ (volvere 動詞の一人称)となります。
日本語だとコロコロ、ゴロゴロ、クルクル、に相当するのがあっちのボルボル、ワロワ(ロ)。
ボルボはもとベアリング屋、コロコロ回る。で、なんでボルボのマークはオスマークなんじゃろ?と毎度脱線していきます。お許しください。
ボルボの創業者は強い丈夫な鉄、男性をイメージとしてこのマークを採用した。
ボルボのマークが男性のシンボルなわけは丈夫、頑丈のイメージだそうです。
もともとこの”♂”マークは古代の占星術で火星のマーク(惑星記号)として始まり、18世紀に分類学者カール・フォン・リンネの発案により、火星を表す惑星記号「♂」を生物学における「雄 オス」を表す記号として使い始まりました。金星を表す「♀」は女性を表すようになりました。こどものころ♂はチンコノカタチだと思っていたのは内緒であります、間違いです。
♂=火星 → ♂=火星and男性
♀=金星 → ♀=金星and女性
錬金術師はそれぞれ錬金術の元素である鉄、銅に関連付けました。惑星記号は化学記号(元素記号)でもありました。
♂=火星 → ♂=火星and男性and鉄Fe
♀=金星 → ♀=金星and女性and銅Cu
ところでなんで火星が鉄なのだ?
「熱した鉄の赤」と「火星の赤色」。そして熱い男の赤てことじゃな。燃える男の赤いトラクターっていうぐらいだし。
♂=Fe=火星。たしかに火星は熱した鉄のようです。
♂・♀の記号の由来 惑星のギリシャ文字表記を寸詰めて作った「惑星記号」だった
♂・♀マークは性を表す記号、雌雄を指す前、惑星記号でしたが、惑星記号のデザインはどのように決まったかについて。間違って信じられていた説と正しい説を順にお示しします。
間違い説「男性のシンボル♂は盾と槍、女性のシンボル♀は柄のついた青銅の鏡」。
正しい説はフランスの古典学者クロード・ド・ソーマーズの説でこちらが一般に信じられています。「惑星のギリシャ語の名前をギリシャ文字で表しそれを縮めたものに由来する」、つまり次表のようになります。例えばPh(ファイ Φ)から♀ができました。
ギリシア語の惑星名とギリシア文字、及びローマよみの対応をカッコ内に付記します※は、ギリシア神としての役割
Kronos Κρόνος クロノス「土星」(Saturn)※時間の神はKhronosでべつのもの Kronosは農耕の神
Zeus Ζεύς ゼウス「木星」(Jupiter)※全知全能の神 最高神
Thouros Θουροσ ソウロス「火星」(Mars)※戦いの神アレスの「荒々しさ」
Phosphorus Φωσφόρος ファスファラス「暁の明星」つまり「金星」(Venus)
Stilbon Στίλβων スティルボン「水星」(Mercury)
♂について 「荒々しさ」を寸詰めたマーク
ギリシア文字「thouros」は「Θουροσ」その文字を変形させて♂マークになります。
上のfigureを見ると、Θ ρ (Th ρ )から変化して♂。下記thourosの意味
『ギリシャ語辞典』(古川晴風編著 大学書林 1989) p529 〈Θουροσ〉 「1 それを持って激しく突進する大盾、あるいは猛々しい戦士の持つ大盾 2 突進する、激烈な、荒々しい」の意。
ゼウスの息子でアーレスという神が居て、いわゆる「武力バカ」ではあるけれど戦闘の神、戦場での彼の荒々しさを thouros 、幸いをもたらすというより荒ぶる神。♂のもとは軍神アレスの「荒々しさ thouros 」から来ています。
♀について 「光をもたらすもの」を寸詰めたマーク
一方♀はPhosphorus「暁の明星つまり金星」のギリシア語表記 Φωσφόρος Phōsphoros から来ています。ちなみにPhosphorusの語源は、photo光をphoros運ぶもの。
頭文字Phをギリシア語で書くと、ΦͰ→♀
『ギリシア・ローマ神話事典』(マイケル・グラント[ほか]著 大修館書店 1988)
p523 「ポスポロス Phosphorus」の項あり「光をもたらす者」の意。暁の明星が擬人化されたもので、曙の女神エオスとアストライオスないしはケパロスとの息子。」とあり。
Phosphorusは暁の明星のこと(=金星)その語源は「光をもたらすもの」
化学では元素リンを元素記号「P」で表し、その”P”のもとはphosphorusであり、phosphoros(暁の明星)が語源です。それに先立つ古代の錬金術師は銅Cu(cupper)を惑星記号「♀」( phosphoros )で表しました。
phosphorosの「フォスフォ」はリン(P)のことでリン脂質をホスホリピッド、リン酸をphosphate、リン酸化をphosphorylationといったりします。元素のリンの語源がPhosphorus(暁の明星)で、占星術師は金星を「♀」で表し、錬金術師が「♀」でCuを示しました。整理します。
Phosphorusは暁の明星のこと(=金星)その語源は「光をもたらすもの」。暁の明星のあとに夜明けが来るから「光をもたらすもの」。
占星術師が、暁の明星(phosphoros)すなわち金星を「♀」という惑星記号でしめした。
錬金術師が「♀」で銅(Cu)をあらわした
リン(P)の語源はphosphoros(暁の明星)
リン(P)も「♀」も 語源は暁の明星 phosphoros 「光をもたらす」から来ている。
錬金術師が「♀」(phosphoros)で表した元素はCuで、現代化学の phosphorusはP(リン)を表す。
古代は別と考えられた「暁の明星」「宵の明星」いずれも金星
暁の明星と、宵の明星はいずれも金星でモーニングスター(ファスファラス)と別にイブニングスター(ヘスペロスと呼ばれる)が2つの別の天体として考えられ神話が先に作られました。(後述しますが水星も暁の水星と宵の水星が区別されていました)
ギリシャ人はこの2つが同じものであることを後で受け入れたものの、神話上の2つの存在を別個のものとして扱い続けていたようです。イブニングスター・ヘスペロスのローマ語にあたるのが Vesper で “evening”, “supper”のこと。”evening star”, “west”の意味で今も使われる。さらにvesper bell が晩鐘(宵の明星の見える頃に鳴る鐘)を表します。
錬金術師は元素を表すために惑星記号を用いた
古代より知られた五星(地球を除く)水金火木土について。下図、上から土木火金水の順です。惑星周期の長い順に並べてあります。
錬金術師が惑星記号で表した元素。
♄ 鉛 lead(Pb) Kronos Κρόνος クロノス「土星」(Saturn)
♃ 錫 tin(Sn) Zeus Ζεύς ゼウス「木星」(Jupiter)
♂ 鉄 iron(Fe) Thouros Θουροσ ソウロス「火星」(Mars)
♀ 銅 cupper(Cu) Phosphorus Φωσφόρος ファスファラス「暁の明星」つまり「金星」(Venus)
☿ 水銀 mercury(Hg) Stilbon Στίλβων スティルボン「水星」(Mercury)
天動説では惑星と認識されていなかった地球を含まないところがミソです。
四番目と五番目の惑星記号と、アラビア数字がよくにています。
地球以外の5つ、五星「水金(地)火木土」を惑星周期の短い順に並べると面白いことが起きます。
1☿ 水星 2♀ 金星 3 ♂ 火星 4 ♃ 木星 5 ♄ 土星
四番目と五番目の惑星記号と、アラビア数字がよくにています。
4 ♃
5 ♄
12345 123♃ ♄ んんん・・・見えなくもないな。
惑星の並びと、曜日の並びが合わない・・・
月と太陽にも惑星記号がありまして、それぞれ「銀」と「金」を示します。象形文字っぽい。
☉ は太陽、金(Au)
☽ は月、銀(Ag)
下図、島津家の家紋みたいな十字が地球。天体「五星+月+太陽」の7つを、一周する速さ(地球を中心とする公転周期 軌道周期)で並べると下のようになります。月が一番早いので一番地球に近く土星が一番遠い。土星 ♄ の軌道周期が10759日、太陽 ☉ は約365日、月 ☽ は約28日で回ります。
上から土木火(日)金水(月) ♄ ♃ ♂ ☉ ♀ ☿ ☽ の順です。これで一週間の要素が揃うには揃いましたが並びが無茶苦茶です。一週間の順番が決まるのにもう一つ手順を要します。
月火水木金土日の順番の決まり方
惑星周期の長い順に地球の遠くから土木火(日)金水(月) ♄ ♃ ♂ ☉ ♀ ☿ ☽ の順でまず並べました。これをどうやって「月火水木金土日」にしたか。
7人の町内会で順番に掃除当番を決めていくやり方みたいなもんです。「土」から数えて24番目の人が次の当番「日」さんですというルールを決めます。24番目は一つ一つ数えなくても最初の人の3つ後になります。
まず一日は24時間です。7で割ると3余ります。24時間の一時間ごとに「土、木、火、日、金、水、月」の順で割り振っていくと、あまりの3だけずれて、次の主役が決まるという仕組みです。
3つ後ろの人が次の当番です。
「土」、木、火、「日」、金、水、「月」 、 土、木、「火」、日、金、「水」、月 ・・・・
月火水木金土日はこうして決まったそうです。
☿ について
ギリシア文字(Stilbon Στίλβων)から ☿ ができました。
Stilbonはわずかに輝く”shining”の意味で小さくて明るいの意味。水星はその姿からStilbonと呼ばれます。その「宵の水星」はヘルメスに関連付けられます。ヘルメスは天の配置、星の位置、季節の計算、天候の出現などを決めた神様(Star Myths of the Greeks and Romans: A Sourcebook)。水星は月の次に周回が早い星なので、動きがすばしっこい「俊足の神 伝令使メルクリウス」が水星に当てられました。ヘルメスとメルクリウスは同一視(融合)されました。メルクリウス(Mercurius)はマーキュリーの語源になります。メルクリウスは雄弁家、盗賊、商人、職人の庇護者とされました。「商いする」の意味のラテン語「mercari(メルカリ)」、「merchandise(商品)」「 merchant(商人)」「commerce(商業)」の語源とも関連します。
☿ 水銀 mercury(Hg) Stilbon Στίλβων スティルボン「水星」(Mercury)
☿ のマークが「両性具有」を指すのはリンネが動植物を分類するときに惑星記号を用い、雌雄記号としたときからです。植物などはほとんどが雌雄同体でそれなどを表すとき「☿」 を使い、hermaphroditic(雌雄同体の)を表す記号としました。
ヘルマプロディトス( Ἑρμαφρόδιτος, Hermaphrodītos, ラテン語: Hermaphroditus)という神が”hermaphroditic”の語源となります。ヘルメス(父)とアプロディテ(母)との間にうまれたのでヘルメ+アプロディテ=ヘルマプロディトス(覚えやすい)で、美少年ヘルマプロディトスは水浴びの最中に泉の精サルマキスに強姦され(ここからよくわからんが)ヘルマプロディトスとサルマキスは「合体」し、ヘルマプロディトスは両性具有のハイブリッドになってしまいます。
混同を避けるために整理すると、マーキュリー水星にはそもそもヘルマプロディートスのような両性具有の意味はありません。マーキュリーが示す水星の惑星記号 「☿」 に両性具有という意味があとから割り当てられ、hermaphroditicという意味が当てられた。そもそも水星はヘルメス神とメルクリウス神が当てられています。ただリンネの惑星記号使用からヘルメスの息子ヘルマプロディトスもhermaphroditicとして水星の惑星記号に関連付けられたということになります。
最後に
古代の支那では水星は「辰星」の名で呼ばれ、硫化水銀のことを現在も日本で辰砂(しんしゃ)と言います。賢者の石のこと。
西洋の錬金術師が水銀を水星と関連付けたことと、古代支那でも辰星(水星)を辰砂(硫化水銀)に関連させたのとは偶然の一致だろうか。世界は5つの要素の陰陽でできているという陰陽五行と西洋の錬金術で五元素と惑星とを関連付けたこととは、結びつくのだろうか。シルクロードのラクダに乗った「運び屋」が不完全に伝えたという気がしないでもないです。
話が飛んで恐縮ですが、クイーンのフレディ・マーキュリーは本名をファルーク・バルサラといいマーキュリーに自分で改名した。フレディ・マーキュリーが水星の惑星記号が意味する「両性具有」も考慮してマーキュリーとしたのかどうかは私にはわかりませんが。
フレディの選んだ「クイーン」を新たなバンド名とした。このバンド名について、フレディは「間違いなく堂々としているし、響きもいい。それに力強さもあって、どこでも通用するわかりやすいネーミングだ。ゲイを思わせるような名前だとわかってはいたが、それはほんの一面にすぎなかった」と語っている。同じころ、フレディはバルサラからマーキュリーに改姓した。
wikipedia フレディ・マーキュリー より引用
長々ごめんなさい。最後まで読んでいただきありがとうございます。
どうぞ良い週末をお過ごしください。
<参考>
merriam-websterより引用
wallowing wallow の語源
Middle English walwen “to turn oneself over and over, writhe about, roll oneself in a substance, indulge oneself unrestrainedly,” going back to Old English wealwian “to roll (of a round object), to roll from side to side (of a person or animal), roll in a substance,” going back to Germanic *walwōjan-, iterative derivative of a base *walw-, also in Gothic afwalwjan “to roll away (an object),” atwalwjan “to roll up to,” going back to Indo-European *u̯ol-u̯-, ablaut derivative of a base *u̯el-u̯-, whence Latin volvō, volvere “to set in a circular course, cause to roll” (< *u̯eluu̯ō), Greek eilýō, eilýein “to wrap round, envelop,” Armenian gelum “to twist, squeeze”
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